最終話
今でもゲームボーイのソフトで遊んでる人がいるって、嘘でしょ?
そう思ったのはわたしだけじゃない。
ゲームボーイさん本人だってそうだ。
「そ、そんなこと言っても騙されんぞ。ワシが作られなくなったのはもうずいぶんと前。新しく作られなければ、いずれ見向きもされなくなる。それがゲームの悲しき運命なのだ」
うん。わたしもそう思う。友だちとゲームして遊ぶことがあっても、誰もゲームボーイなんて持ってないもん。
だけど、葛葉くんは言う。
「いや、確かにゲームボーイ本体もソフトも、もう作られてはいないけどな。大江も持ってる、Switchってあるだろ。さっきスマホで調べた時に見たけど、あれでゲームボーイのソフトが遊べるみたいなんだ」
「えっ? そうなの?」
「ああ。オンラインだっけ? とにかくそういうのに入れば、ゲームボーイのソフトも遊べるようになるらしい」
そうなんだ。わたし、今流行ってるゲームくらいしかやらないから、その辺のこと全然知らなかったよ。
そして、わたし以上にゲームボーイさんは驚いていた。
「なんだと? Switchといえば、最新のゲーム機じゃないか。それでも、ゲームボーイは遊べるのか?」
「そうみたいだぞ。こんなことができるのも、ゲームボーイそのものはなくなっても、それで遊んだ思い出を大事にしてる人達がいるからじゃないか?」
それ、ちょっとわかる。
わたしも、もっと小さいころに遊んでもう使わなくなったオモチャでも、懐かしがったり大事に思ったりはするからね。
すると、ゲームボーイさんの画面に、人の顔っぽいものが映し出された。
相変わらず色はなくて、画質はけっこう荒っぽいけど、その顔は泣いていた。
「そうか。今の世の中にも、ゲームボーイを大事に思ってくれている人がいたんだな」
「そうだよ。それに、さっきポケ〇ンや色んなゲームのキャラクターが出てきたけど、その中には今でも新作が作られるのもたくさんあるんだよ。これって、ゲームボーイさんや昔のゲームが頑張ったから、こんなにたくさん続いたんじゃないかな?」
「そうか。そう言ってくれるか。ならば、もうワシに思い残すことは何もない。安心して旅立つことができる」
ゲームボーイさんがそこまで話したかと思うと、急にこの世界が真っ暗になる。
えっ、なに?
ビックリするけど、それはそんなに長くは続かなかった。
世界に光が戻った時、わたしたちは、元いた蔵の中に立っていた。
「帰ってこれたみたいだな」
「そうだね。色も戻ってる」
蔵の中は薄暗かったけど、久しぶりに見た色つきの世界は、それでも鮮やかに見えた。
ふと辺りを見るとそこにはゲームボーイさんがいた。
ううん。どうやらもう付喪神じゃなくなったのか、ここにあるのは、ただのゲームボーイ。もう、うんともすんとも言わなくなっていた。
「恨みがなくなって、付喪神でいる必要もなくなったのかな」
「多分な。これで、今回の百鬼夜行の仕事も終わりだな」
「そうだね」
ゲームボーイさん。強くはなかったけど、なかなか大変な相手だった。
だけどなんでだろう。大変だったけど、不思議と嫌な感じはしなかったな。
「さてと。それじゃ、帰ってゲームでもしようか。葛葉くんもいっしょにやる?」
「そうだな。どんなのがあるんだ?」
「うーん。ここはやっぱり、ゲームボーイのソフトをやってみよう!」
って言ったけど、ゲームボーイのソフトで遊ぶのって、どのくらいお金かかるんだろう。
今月のお小遣い、もうあまり残ってないんだよね。
今回の事件に関わったから、これも百鬼夜行のお仕事の後始末ってことで、お父さん出してくれないかな。
おしまい。
二人は百鬼夜行!? レトロゲームの逆襲! 無月兄 @tukuyomimutuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます