第3話
不機嫌全開な、ゲームボーイの付喪神。その怒りはまだ収まらない。
「ゲームボーイアドバンスもそうだが、そもそもあんなのに乗り換えてワシで遊ばなくなった人間たちも許せん。ゲームボーイには、面白いソフトがたくさんあるんだぞ! 」
「そんなこと言ったって、新しいやつの方がいいっていう人は多いんじゃないの? 画面だって、色ついてきれいな方がいいし、35年も前に作られたら、動かなくなってるやつも多いんじゃないかな?」
「うるさーい! だから、色がないからってバカにするんじゃないと言ってるだろ! 動かなくなってしまったら仕方ないが、その時はまた新しいゲームボーイを買えばいいだろ! なのに、ゲームボーイアドバンスが発売されて間もなく、ワシは生産中止になったのだ!」
本当だ。スマホで調べたら、もうとっくに作られなくなってるみたい。
そんな昔のゲームなら、仕方ないよね。
けど、ゲームボーイさんは納得してないみたい。
「ゲームボーイの生産が中止になっていなければ、今でも多くの者がゲームボーイで遊んでいたというのに! なぜ作らなくなったんだ!」
「そんなの知らないよ! 作ってた会社の人に聞いてよ!」
「とにかく、ワシは作られなくなったゲームボーイと、それによって遊ばれなくなったソフトの怨念が集まって生まれた付喪神だ! この恨み、なんとしても晴らしてくれる! まずはお前たちからだーっ!」
「ちょっと待って! 恨みも何も、わたしたちそもそもゲームボーイなんて最初から知らなかったんだけど!」
「問答無用! ゲームボーイを知らないことが罪なのだーっ!」
滅茶苦茶だよ!
だけど、ゲームボーイさんは聞いちゃくれない。
大声で叫んだかと思うと、目の前がテカテカって光る。
って言っても、この世界には色がないから、それっぽく見えるってだけだけど。
そうしてわたし達の目の前に、何かが出現した。
それは四角くて上の方に画面のついた機械。下の方にはゲームのコントローラーみたいなボタンがついてるけど、あれがゲームボーイさんなのかな?
そして。もうひとつ……
「なあ。あれって……ポケ〇ンだよな?」
葛葉くんが、ポカンと驚きながら言う。
うん。
そうだね。羽の生えた、ドラゴンみたいな姿。あと、色はついてないけど、多分赤。
ポケ〇ンに出てくる、リザー〇ンだ。
でも、なんで!?
「ハッハッハ! これこそがワシの力だ! この世界では、ゲームボーイのソフトに出てきたあらゆるキャラを登場させることができるのだ! これでお前たちをやっつけてくれる!」
なにそれ。ものすごい能力なんだけど。
それに、ポケ〇ンってそんなに昔からあるんだ。
けど、これってピンチかも。
ポケ〇ンで攻撃してくるなら、わたしにもポケ〇ン使わせてよ! ゲームと違うじゃない!
だけど、怒ったゲームボーイさんはそんなこと聞いちゃくれず、リザー〇ンがこっちにめがけてやってきた。
ええい、こうなったらしかたない。
わたしだって、代々続く鬼の末裔なんだから、そのパワーを見せてやる!
「えいや!」
力を込めると、頭からニョキっと二本のツノが生えてくる。これで、普通の人間とは比べ物にならないくらいのパワーが発揮できるんだよね。
葛葉くんも妖狐の力を解放して、狐の耳とシッポがはえてきた。
さあ、勝負だリザー〇ン! ポケ〇ン対妖怪の、夢の対決だよ!
なんか色々怒られそうだけど、その辺のことはあとから考えよう。
向かってきたところに、カウンターでパンチをお見舞いする。
その瞬間だった。
「ギャァァァァッ!」
わたしのパンチをくらったリザー〇ンは、叫び声をあげたかと思うと、あっという間に倒されちゃった。
えぇっ! 弱い!
「くっ。やはりワシの力では、ゲームボーイのキャラを登場させることはできても、大した戦闘力にはならんか。ポケ〇ンで言えば、レベル1くらいだ」
「なにそれ。めちゃめちゃ弱いじゃない!」
「し、しかーし、まだまだこんなことでは諦めんぞ! もっと色んなゲームのキャラクターを登場させてやる!」
そうして現れたのは、赤い帽子を被ったヒゲの人とか、ピンクの丸いやつに手足がくっついてるのとか、わたしでも知ってるものばかり。
もちろん、色のない世界だから、赤とかピンクとかは全部イメージだけどね。
だけど、そんなイメージがすぐにできるくらい、みんな有名なキャラばかりってことだよね。
ゲームボーイってとっても古いやつだと思ってたけど、どのキャラの登場するゲームも、そんな昔からあったんだね。
ちなみに、どれもこれも強さは大したことないから、みんな苦もなくやっつけちゃった。
「くそっ! それなら次は、どのキャラを登場させてやろうか」
「まだやるの? どれを出しても強さは変わんないし、もうやめたら?」
「いいや! 忘れられたゲームボーイとそのソフトの無念を晴らすまで、ワシは諦めんぞ!」
どうしよう。正直、襲ってくるキャラはみんな弱いからやられる心配はないけど、ここまでしつこいと、すっごく面倒。
もう、ゲームボーイさんごとやっつけた方がいいのかな?
けどわたし、別に付喪神を何がなんでも退治しようとは思ってないんだよね。
わたしも一応妖怪なんだし、人に迷惑かけなきゃ、妖怪だって平和に暮らすのが一番って思ってるんだけどな。
けど、ゲームボーイさんの怒りようを見ると、力づくで退治するしかないのかな?
「葛葉くん、どうしよう?」
「そう言われてもな……」
助けを求めると、葛葉くんも困ったようにうーんと唸る。
だけどそれから、思いついたようにこう言った。
「なあ。お前は、ゲームボーイのソフトが遊ばれなくなったのが嫌で、恨みを晴らそうとしてるんだよな?」
「そうじゃ! 古いゲームにも面白いものがあるのだと、思い知らせてくれる!」
まだまだやる気みたい。これは、どうしようもないかも。
そう思っていたら、葛葉くんはさらにこう言った。
「ゲームボーイのソフトなら、今も遊んでるやつ、たくさんいると思うぞ」
…………へっ? そうなの?
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