暗号?

星之瞳

第1話

『トリあえず』なんだ、このメッセージえっと、発信先は鳥崎。あいつ数日前から重永山えながやまにバードウォッチングに行くって言ってたっけ。俺は返信した。

『どうゆう意味だ』だが、いくら待っても既読にならないし、返信もない。

なんだか胸騒ぎがした俺は、とるものもとりあえず重永山に向かうことにした。

途中のコンビニで、飲み物と食料を調達して。


重永山はあまり開発されていない山で鳥たちの楽園になっている。姓に鳥が入っているせいか鳥崎は鳥が好きでよくバードウォッチングに出かけていた。一度だけだが鳥崎と一緒に出掛けたことがる。


駐車場に車を停めると俺は山道を歩き出した。確かこの先に休憩所ががあったはずだ。そこに行ってみよう。


休憩所に着くと、俺は

「鳥崎いないか」と叫んだ。

「その声は里本か?」間違いない鳥崎の声だ。俺は休憩所内に入って行った。奥のベンチに鳥崎が寝ていた。

「おい鳥崎どうしたんだ、あんな変なメッセージ送ってきて、返信しても既読付かないし心配したぞ」

「足くじいてな、休憩所までやっとの思いでたどり着いたんだが、動けなくなってな。すまないが食べる物持ってないか?」俺は持ってきていたスポーツ飲料を渡した。鳥崎はおいしそうに飲む。

「おにぎり食うか?」おにぎりを渡すとかぶりついた。暫く待っていると、


「なんてメッセージが届いたんだ」

「『トリあえず』だよ」俺はスマホの画面を見せた。

「ああそれな、ここにたどり着いたけど足が痛くて動けなくなって、お前にメッセージと送ろうとしたんだが、充電が切れかかっていてな、途中で送ってしまったって訳だ。本当は『トリあえず(鳥会えず)足くじいて動けない、助けて』と送ろうとしたんだが、『トリあえず』と打ち込んだところで電源が落ちそうになって慌てて送ったんだ。それにしても、こんな変なメッセージで来てくれるなんで嬉しいな。ありがとう里本」

「変なメッセージだったから余計に気になったんだ。来てよかったよ。スマホの電池無くなっているんなら助けを呼べなかっただろうしな」

「ああ、食料も飲み物も無くなって正直やばかったんだ。おかげで命拾いしたよ」

「感謝してくれるなら来た甲斐があったと言うことだな。これからどうする車で来てるからとりあえず家に送ろうか?」

「そうしてくれるとありがたい」


俺は鳥崎に肩を貸すと山道を降り始めた。駐車場までかなりかかったがどうにかたどり着き俺たちは帰路についた。


あのメッセージは暗号でもなんでもなかったのか。目当ての鳥に会えなかっただけだったなんて。俺は拍子抜けした気持ちでハンドルを握った。

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暗号? 星之瞳 @tan1kuchan

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