トリあえず、インプレゾンビを一掃しよう

アーカーシャチャンネル

トリあえず、これはある種のフィクションである、と。

 彼はコンビニ前でノートパソコンを片手に、SNSのトレンドを確認する。


 何故にノートパソコンを片手に持てるのかと言うと、軽量化されたものであるため、それが可能なのだ。


 それに加えて、彼はスマホを持っていない。スマホよりも配信を行うならばノートパソコンの方が便利だ、と思っているのだろう。


 スマホだと通話だけでなくアプリの通信料などでお金がかかるので、あえてパソコンの方が……という事かもしれない。


 実際、彼がパソコンに取り付けているのはレンタルの通信ツールで、それがあれば回線は確保できるのだ。


「この調子だと、トリまでにトレンドに残っている可能性は低いな」


 彼がトレンドを追うために見ていたつぶやきサイトの隣で見ていたのは、お昼時に何故か昨日に配信されたVTuber歌合戦……その切り取り動画である。


 配信されたのがホワイトデー近辺だったのだが、その時には自分も配信をやっていた関係で、リアルタイムでは視聴できなかった。


 ここで言うトリとは、もちろんVTuber歌合戦のトリ担当である。しかし、切り取りでトリがカットされている可能性もあるだろう。キリトリだけに。


「この動画投稿報告に大量のコメントが……と思ったら、ほとんどがインプレゾンビか」


 インプレゾンビとは、ざっくりいえばSNS炎上の原因になる勢力だ。


 それ以上言及すれば、色々とリアルのインプレゾンビをテーマにしているのでは……と言う具合に炎上する危険性もあるので、割愛する。


 そういう発言のみをキリトリ、まとめサイトがアフィリエイト収益狙いでフェイクニュースを掲載するのが、今の日本のSNSなのかもしれない。


「こうなったら、最後の手段を……」


 この切り取り動画投稿に集めるインプレゾンビ、それを一斉に通報することで、彼はインプレゾンビを一掃しようとした。


 晒しと言う手段に出なかったのは、それをやればインプレゾンビなどと同類になってしまうからである。それだけは避けたい。


 そして、彼は正規手段でインプレゾンビを通報し、地道に……。



 午後5時くらいになっただろうか? インプレゾンビなども落ち着いた所で、彼は再びトレンドをチェックする。


「VTuber歌合戦がトレンド上位ではないが、ある程度は落ち着いてきたか」


 トレンドのいくつかは、インプレゾンビなどが押し上げた炎上する話題がいくつか消滅し、大相撲やソシャゲのガチャの話題などが上位に入っていた。


 それでもVTuber歌合戦はトレンドには入っているが、注目度としては低い部類か……ポジティブな意見も多い中で。


「そうだ、これを投稿しておかないと……」


 インプレゾンビの通報ばかりで、すっかり忘れていたアレを投稿したのである。



【トリあえず、インプレゾンビは一掃することにしました。この動画を視聴している人が、そうした勢力にならないことを祈っております】


【冒頭のやり取りを含め、当然ですがフィクションでございます。実在のインプレゾンビを題材にしたら、それこそ炎上は避けられないでしょう】


【我々は、そうしたゾンビものを目撃することのないように……SNSと上手く付き合う必要性があるのですから】


 まさかの展開だった。


 一連の内容が、実はVTuberの作った動画であり、ネットマナー向上のために書き下ろされたものであると。


 しかし、ネットマナーをある程度知っていたとしても様々な箇所で炎上し、同じような展開が起きるのは想像に難くない。


 この動画を視聴したユーザーの通報によって、インプレゾンビの闇バイトだったりインプレゾンビのセミナーなどを表舞台に出し、マスコミが報道するまでに至っている。


 インプレゾンビがお手軽に金儲けができるという認識から、手を出せば即アウトな……それこそ麻薬などのようなものである、そう彼は認識させたいのだろう。



 ……とはいっても、この作品はフィクションであって、動画が実在するインプレゾンビを指しているのかどうかも、定かではない。


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