我が愛しのトリさんよ

無雲律人

我が愛しのトリさんよ

「こ、ここがKADOKAWA本社か」


 俺は今日、カクヨムWeb小説コンテスト、通称カクヨムコンの授賞式に来ている。


 俺がラノベに目覚めたのはカクヨムのおかげだし、カクヨムの仲間たちと切磋琢磨した結果が今回の受賞だ。


「トリさん……トリさんはどこだ?」


 俺が読み専から書き手に回った理由は、書籍化目的でも金目当てでもない。カクヨムのプリティー過ぎるマスコット、トリさんに会うためだ!


 俺はトリさんを探してビル内をうろちょろ探し回った。あのプリティーさならきっと目立つだろう。きっと俺の熱い想いが通じて見つかるはずだ。


 でも、なかなかトリさんは見つからない。ポスターすら見付からない。クソッ。このビル広大過ぎるだろう。


 俺は尿意を催して、とりあえずトイレに入った。もしかしたら小さなトリさん人形か何かが飾ってあるかもしれないと期待したが、肩透かしだった。


 トイレから出ると、社員証を付けた若い男が息を切らしてこちらに走り寄ってきた。


「ヒミズさん! ヒミズさんやっと見付けた! 探しましたよ。授賞式始まっちゃいますよ~!」


 俺の担当になった編集者だった。リアルでは初対面だ。リモートでは何度か顔合わせをしている。


「すいません。トリさんを探してて、つい……」

「トリに会いたければ、とりあえず授賞式会場に来た方が確実じゃない!? あ、でも今日はトリは体調不良で休みなんですよ」

「何だって!? トリ会えず!? そんなバカな!  俺はトリさんに会うためだけに執筆頑張ったんですよ!?」

「ごめんなさいね~。ここまでトリを想ってくる、る人がいるとは思わなくて」


 俺は……俺の努力は……。トリさんに会うためだけに今まで努力してきたのに。


 思わず俺の目から温かい水がこぼれ落ちる。


 ああ、悲しい。この悔しさをどこにぶつけたら良いんだろう。


 俺は来年こそトリさんに会うために、さらに執筆を頑張ろうと心に決めた。


 とりあえず今日は焼き鳥でも食って帰るか……。


────了






 

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