離さないでメロス

きつねのなにか

離さないでめろす

 わしの名前は王。愚鈍で愚かな王じゃ。

 国民に舐められ悪性でどんどん人が離れていってる。

 ちょっと困っている。だれかなにか良い方法はないものか。

 しかしそんなわしにも見放さない、手を離さない友がいたのじゃ。

 そう、メロスじゃ。彼はわしがなにをやっても手を離さないで見守ってきてくれた。

 わしは彼に全幅の信頼をおいておる。彼はわしを裏切らない。わしも彼を裏切らない。

 そんなメロスと居酒屋に行ったらわしが乾杯の音頭を取りオーダーを取りわしが支払いをする。こんなの友達のメロスなら当然じゃ。

 彼が徒競走に出よう者なら全力で応援する。徒競走の走者に毒を盛るなど朝飯前だからの。

 彼が玉入れに出よう者なら敵陣営にグレネードを仕込んでおく。くっくっく、今目の前で爆散したぞ。

 昼食はサンドイッチに焼きそばという下賎の食い物なんか食べさせるわけはいかない。

 王特製優雅な昼食を取らせるのじゃ。メロスは食べずに妹が持参したご飯を食べていたが。くう、妹思いで泣かせるのう。優雅な食事は鴉に食べさせておいた。

 午後は勤務でメロスの勇姿を見られなかったが彼が全裸でマラソンを完走することなど想像の中だけでお腹いっぱいじゃ。ああ、見られたらどんなに良かったことか。


 わしの友人にはもう一人凄い人物がいる。セリヌンティウスという石工じゃ。

 メロスに爆散されたわしの王城を建て直してくれただけではなく、大王様像や超王様像、ギガンティック王様像にセンシティブ王様像など、素晴らしい建築物を建ててくれた人物じゃ。毎年作るので毎年莫大なお金が飛んで行くが仕方がない。作らせないとこの国から出て行くというのじゃ。わしから離れないでほしい。わしの側にいてほしいのじゃ。


 しかしわしの二人を手放せるものがいた。妹夫婦じゃ。特に妹は二人を説き伏せわしとの関わりを断ってしまった。なんてことをしよる。処刑するしかない。


 妹夫婦を処刑しようとシラクサに呼んだ日、シラクサで暴動が発生した。

 なんと妹が事前に反乱の準備をしていたのじゃ。


 わしは反乱でギロチンにかけられ処刑された。

 ああ、首と身体を離さないで……。

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離さないでメロス きつねのなにか @nekononanika

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