先立つ私から

ゆっくり

短編

 青空を駆ける様に飛び去る鳥は、優雅で美しく、見る者に自由を思わせる。海原を踊る様に泳ぐ魚は、見る者に娯楽を思わせる。ならば、地上に生きる我々は、一体何を思わせられるのだろうか。私は、それが知性であると思っている。


        大切な人へ


 人は皆、大小に関わらず辛いことが沢山あって、皆それを抱えていると思う。だからこそ、その誰もが持っているそれを軽視されがちだし、疎かにされがち。でも貴方はそうじゃない。眼に見えないものが見えるから人に最大の敬意を持って接してる。そんな立派で素敵な貴方を一人置いていってしまうのはとても申し訳ないよ。色々伝えたいことがあって困っちゃうや。本当は貴方と一緒に生きたかった。貴方のおかげで私は体の苦痛とも闘えた。本当はもっと早くお別れが来る筈だったけど、貴方のおかげで今まで生きてこれた。本当にありがとう。でもだからこそわかるんだ。もう永くない、もうそこまで終わりが近くに来てるって。すごく怖いよ。怖い、でも、それでも貴方がくれた言葉が私をいつも守ってくれてたよ。ありがとう。本当に、本当にありがとう

そして、ごめんね。先に待ってるからさ、向こうでもずっと一緒にいてほしいな。


             貴方の彼女より


 私はこの橙色の空を屋上で眺めている。今はここでこう眺めていることしかできない。ただ暗くなっていく空を、万天の星空の下、流れ星が落ちていくのを、ずっとぼやけている目で見続ける。

「もっと何かできた筈なのにな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先立つ私から ゆっくり @yukkuri016

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ