第2話 委員決めと自己紹介カードについて
刺激の多い一日というのは速いもので、もう中学校に通って3日目である。普通の授業がそろそろ始まる頃かな、とも思っていたが、基本的には学活の時間がまだ多い。そしてまず初めにすることが、委員決めである。自分は人見知りで、自分から話しかけることが大の苦手であるため、その場を強制的に作った方がいいと考え、具体的に何をするかは分からないが、皆との関わりの多そうな「議長」とやらにすることにした。幸い立候補者は自分だけであったため、とりあえず男の議長は自分に決まった。これでひとまず安心、と考えていると、後ろから快活な(うるさい)声が耳に入ってきた。
「はい!私も議長します!」
「お、じゃあ女子の議長は氷丘でいいな?頼むぞ、八尺と氷丘の2人」
…このバカのせいで皆の目線が痛いが、女子の方は一応知らない人ではない事が確定したため、少し安堵した。
そしてこの日の反省会で分かったが、議長というのは反省会の時前に出ていつもの流れ(明日の時間割や日直の確認等)をする委員であった。このバカと一緒に並んで前に出るのは少し不服だが、まぁ多少なり自分が皆の印象に残って、話しかけて貰えることが多くなるなら最初はもうそれでいいか、とも思った。
翌日の学活は自己紹介カードを書く、というものであった。自己紹介カードには自分の名前、誕生日、血液型、入る予定の部活、趣味、好きな教科、食べ物、アーティスト、そして将来の夢と皆に一言を書くスペースがあった。名前…、誕生日…、と書いていって出来上がったものがこれだ。
名前…八尺渉 誕生日…10/10
血液型…B型 部活…野球
趣味…アニメ鑑賞
好きな教科…数学
食べ物…ラーメン
アーティスト…ずっと明け方でいいのに。
(ずとあけ)
将来の夢…まだ決まっていない
皆に一言…よろしくお願いします。
趣味といえるものも特にないため、アニメを見ることを趣味ということにした。実際アニメは好きだしね。引かれないよね、
好きな教科は昔から算数、中学校からでいう数学だった。暗記が嫌いで、また国語の「この登場人物の気持ちを考えて書きなさい」等の答えが絶対にこれ、というものが決まっていないような問題がとても難しく感じ苦手であったため、暗記せずに答えられて、絶対的な答えがある算数が昔から好きだった。
また好きなアーティストは、ずとあけというメンバーが流動的なバンドで小6の初め頃ぐらいから好きだ。特にベースが気持ちいい。ライブにはまだ行ったことはないが、また行ってみたい。
そして将来の夢だが、これは特に決まっていなかった。自分は特に何が出来るという訳でもないので、自分が何かを職にしてそれで飯を食っていることの想像がまだ上手くつかなかったのである。
どうせ後ろのバカはすぐ書けているんだろうな、と後ろを振り返ると、案の定既に書かれている自己紹介カードを裏向けて下に敷き、突っ伏して寝ていた。こいつはほんと元気な時は元気なのに静かな時はとことん静かだな…と思いつつ、綾の自己紹介カードの角をつまんで引っ張り、綾を起こすことなく慎重に取り出して内容を見た。
名前…氷丘綾(あやじゃなくてりょう!)
誕生日…2/14(バレンタインデーだよ♡)
血液型…A! 部活…バレー!
趣味…ピアノ♪とスポーツ全般!
好きな教科…体育!
食べ物…いちごのふんわりかき氷
アーティスト…クィーンヌー
将来の夢…女バレ日本代表!
皆に一言…いっぱい話そ!仲良くしてね♡
なんか色々元気だなー。しかし誕生日がバレンタインデーとはいつみても中々に驚きだ…。クィーンヌーは、勘違いしていなければ、有名バンドのQueen Gnuのことである。あとこいつがA型とかなんか許せん。俺と交換しろ。
そうして眺めていると、起きたのか、
「あれ私のあれは?」
と後ろから綾が言う。
「はい、これやろ」
「あーそうそれ。…てか、なんで私の見てたの?笑」
「…なんとなく」
「えー?気になってたんじゃないんー??笑」
…こいつはからかいが上手くなってきている。厄介だ。
しかし、俺のと綾のを比べると誰でも分かるように、陽と陰が分かれている。なぜこうも分かれてしまうのだろうか。自己紹介カードというのは、ある意味陽と陰の分別カードかもしれない…
そうこうしているうちに、先生が後ろから集めてきてと言ったので、俺は綾に自己紹介カードを渡す。すると、綾は俺の自己紹介カードをまじまじと見た後、
「私ならもっと上手く書ける!」
と言って、さっと消しゴムで下の方の部分を消し、何かに書き直して皆の分を集めに行った。…不安だ。
後日教室の後ろに掲示された皆の自己紹介カードの中から自分のを探し見ると、将来の夢と皆に一言の部分が書き替えられていた。
将来の夢…綾のおむこさん♡
皆に一言…綾が大好きなので、綾のことなら何でも聞いてください♡よろしくね♡
…終わった。
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