第3話 無数の矢とその弁明について
まずいことになっている。
とりあえず綾を見つけ、かわいがる程度に肩を撫でる。
ドンッ
「ったぁ!なにすんねん」
「いやこっちのセリフな、お前俺のあれになんて書いたか、言え」
「あー?おもんないことしか書いてなかったカードを盛り立てただけやけど」
「どこがやねん!あんなん書いてもたらすぐ噂立ってまうやんけ…顔立ちに自信があるお前なら分かるやろ?」
「はぁ…」
「とりあえず先生に言って書き直す」
「せっかく手直ししたったのにまたおもんなくなるやん、」
俺はもう一度、かわいがりパンチを綾の肩に喰らわせた。
「った…チッ渉は釣れないなぁ。」
「舌打ちすな。俺の方がしたいわ」
とりあえず先生に諸々の事を話し、自分は書き直しが認められ、綾は入学早々こってり絞られていた。「私そんな悪いことしてないのに…」とかふざけたことを言っていたが、一旦ここは無視することとする。
しかし書き直したから噂が収まる訳もなく、まだ周りの皆からはまるで無数の矢の様に思える鋭い目線がキュッと自分の方に寄ってきていた。
自分は幸い議長なため、反省会の場を拝借して少しだけ弁明の時間を設けさせて貰った。
「えっと自己紹介カードのことなんですけど、あれは、r…」
名前で呼んだらまた誤解が生まれるかもしれない。咄嗟に名字に切り替える。
「…あれは、氷丘が勝手にやったことで俺は本当に何も知らなかったんで、全然そんなんはないんで、はい」
隣の綾はちょっと不服そうな顔をしていたが(俺の方が不服だ)、自分と綾が議長で横並びになっていて、顔の見比べが安易に出来ることが幸いしたのか、皆は自分と綾じゃ本来いるべき世界が全然違うことを感じ取っていて、すぐに納得して、自分が話し終えた時には既に周りと他愛のない会話を繰り広げていた。案外事態はそこまで大きいものではなかったのかもしれない。ひとまず安堵した。なぜか綾は頬を膨らませていた…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます