第4話 体験入部と本入部の扱われ方の違いについて
そうして1週間が過ぎた頃、体験入部なるものが始まる。しかし、自分はずっと野球に入るつもりでいたので、野球部にずっと体験に行くことになる。
野球部は、3年2年7人ずつの合計14人がいた。案外人は少なく、また小さいグラウンドはソフトボール部が使っているので、大きいグラウンドをサッカー部、陸上部と分け合っていることもあり、部活といえどこれぐらいかと思っていた。が、マシン等が倉庫にあり、設備的には悪くは無い様に見える。
顧問は、パッと見ガラの悪そうな、サングラスをかけた20代後半ぐらいの男の人だった。身長は3年の高い人と同じぐらい。もしかしたら抜かれてるかも、ぐらいだ。あと声が大きくなく、しっかり聞かないと聞こえない。
体験入部に来た1年生は自分含め13人。大体少年野球のチームが一緒だった人達が一緒に来ているらしい。顧問の先生は、まぁまぁ優しめな感じで出迎えてくれた。
「えー初めまして。野球部で顧問をしている勝山誠(かつやま・まこと)と言います。よろしく」
「「よろしくお願いします」」
「えーまず、この中で絶対野球部に入ると決めている人は何人ぐらいおるかな?」
自分はもちろん手を挙げた。周りを見ると、自分含め大体8,9人ぐらいが手を挙げている。
「ふむ…わかった。下ろしてええぞ」 サッ
「えーまぁ見たら分かると思うけどみんなこんな感じで野球を楽しむために来てるから、君らも今日から1週間は野球を楽しむためにここに来て欲しい」
「「はい」」
「じゃあとりあえずアップの仕方から覚えてもらうか。多喜、1年にアップ教えといて」
「はい。じゃあ君たち、俺に着いてきて」
そういって自分たちに色々教えてくれるのは、2年の多喜先輩(たき・?)という人らしい。
一通りアップを覚え、練習に入っていく。最初は何箱かある野球のティー用ボールをサッカー部、陸上部に入らない方向に打つというものだ。ちょっと不安だが、上手く出来るだろうか。
そうして俺の番がくると、金属バットを持ってボールを打つ。投げてくれるのは多喜先輩である。
2年や3年のように遠くに飛ばせるのは芯に当たった時だけで、安定して飛ばせないので2年や3年は凄いなぁと思っていた。
そうしているうちに1つのセットが終わり、次は生徒自身が打ってそれを他の生徒が捕る形式でサードノックである。といっても、自分たちには優しめであり、まぁ簡単な方で楽しかった。
体験入部的には全然アリだと思った。これは入るしかない。
そうしてあっという間に1週間が過ぎ、本入部の日になった。結局1年生で入ったのは自分含めた11人であった。
最初はボールの捕る時の姿勢や打つ姿勢等の基礎を振り返ってやっていく。しかし、本入部をするともちろん客ではなく部員扱いになるため、まぁ雑に扱われた。もちろん総体が近いので先生は2,3年の方を重点的に見るし、自分たちの中の一部の人は2年とある程度話しているが、基本的には先輩が教えてくれることもほぼなく、また走るのを抜いたりするといつ見ているのか、先生が普段の声は小さいのにバカでかい声量で怒鳴ってきやがるので、全然楽しくはなかった。これも2年になったりしたら良くなるのかな、と耐え忍ぶのみ。しかし、体験入部と本入部では扱いの差は天と地だ。これはひどい…
ただ、1年同士では仲良く出来そうだ。その中でも、話しかけてきてくれて今仲良くできている、筧悠晴(かけい・ゆうせい)という奴がいる。筧は4組で、クラス的には関わりはないが、隣なので廊下などでよくすれ違う。その時に色々話したりしている。顔は整っているが、下ネタをよく言うせいか中々モテない。
キャッチボールやティーなどは、よく筧としている。とりあえず相手の人が決まってよかった。1年は11人なので、絶対1人余る。キャッチボールは3人でやらないといけなくなるし、ティーも誰かに投げてもらわないといけなくなる。それは避けたかったので、よかった。自分たちはまだ中学生だが、人付き合いというのは複雑で、そういうのもある意味競争みたいなものである。この世界で陽キャになる人ってコミュ力高すぎないか…
とりあえず、まだ中学生は始まったばかりだから気張らないようにのびのびやっていこう。そう心に決めた。何も起こらないでいてほしい…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます