第31話 新たな旅立ち

 僕達一行は、山型迷宮ダンジョンの問題を解決し、クレディオス様の待つ神殿へ報告のために訪れていた。


 ここは、創造神クレディオス様の部屋。


「やあ!みんな、ご苦労様」


 クレディオス様が全開の笑顔で僕達を出迎えてくれる。


「おう、ボス。ログが教えてくれた悪魔とやらと一戦やってきたぜ」


「クレディオス様、問題の悪魔なんですけど、どうしましょう。捕らえて連れてきたんですが」


「「・・・」」


「最高の結果だね。悪魔を捕えることが出来たのは大きいよ」


 クレディオス様はそう言うと、指を鳴らす。金属製の等身大の箱のようなものが出現し、そのまま気絶している悪魔を中に取り込んだ。拘束具のようなものだろうか。相変わらずの万能【指パッチン】である。


「「!!!」」


「あとでじっくりと情報収集をしようじゃないか」


「そうですね。試してみたんですが、【鑑定眼】も文字がバグってしまって意味ありませんでした」


「この世界の生物じゃないからね。それはそうでしょ」


「しかしどう考えても悪魔達が現れるのが早いんですよね。まだ数十年しか経ってないのに」


 僕は気になってることを口にした。そう、まだ十分な時間の猶予はあるはずなんだ。


「んー。それについては何とも言えないね。ログ君がいた未来でも実はこの悪魔のように偵察のために世界に潜んでいて、記録に残ってなかっただけかもしれない」


 確かに。古文書に記されていなかった可能性だってある。


「それこそ、ログ君の影響でこの世界は変化してるんだ。もうログ君のいた未来の世界とは全然違う未来を進んでるわけだから色々なものが変化してる可能性だって十分にある」


「おっしゃるとおりですね」


「そう。だからそれを考えてもしょうがないのさ。あの子に聞けば全部わかるよ」


 そう言ってクレディオス様はサムズアップをしてくれた。いま神々の中での密かなブームらしい。サムズアップが。


「「・・・」」


 さて、さっきから借りた猫のようになってしまっているルーとラトリをこれ以上放置しているのはかわいそうだろう。


「ルー、ラトリ、お待たせ。紹介するよ。この方がウォンダの創造神、クレディオス様だ」


 僕は二人に向き直り、クレディオス様を紹介する。


「人族の子達。初めまして。僕がこの世界の創造神、クレディオスだよ。よろしくね」


 クレディオス様がそう自己紹介をした瞬間、何故かクレディオス様をリアルに後光が差した。ちょっと演出こだわり過ぎじゃありませんかね?


「「は、はわわゎゎ」」


 ルーとラトリはあたふたしながら床に平伏してしまったよ。


「ちょっとクレディオス様?眩しいんですけどその光は何です?」


「そういう反応を二人に期待しちゃったんだけどね。ルーちゃん、ラトリちゃん、そんなに過剰に敬わなくていいんだよ」


「くくくくく」


 まったく。ウォーラ様も必死に笑いを我慢してるよ。二人は申し訳無さそうに平伏することをやめて立ち上がった。


「あ、改めてルーと申します。初めまして、創造神様」


「ラ、ラトリ..と申しましゅ」


 ラトリ、噛んだ。


「ふふ。よろしくね。創造神ではなくてクレディオスと呼んでほしいな。君たちとは長い付き合いになるんだからね」


「わ、わかりました!クレディオス、様。実はクレディオス様にお伺いしたいことがありまして」

「・・・」


「ん?何だい?何でも聞いてよ」


 く!質問されることがわかってるくせにあの惚けた感じの顔よ。ちょっとグーパンしたい。..いかんいかん、ウォーラ様の気性に寄ってきてるぞ、僕。


「私達の技能スキルのことなんです。気付いた時には不思議な技能スキルを覚えていて。これは何なのでしょう」


「なるほど。それは【光の始祖】と【闇の始祖】の事だね?」


「「はい」」


「ちょっと前置きから説明してしまうんだけど、いいかな?」


「「はい」」


「二人とも仲がいいね。んん。まずウォンダにはいままで光と闇の神術は存在していなかったんだ」


「はい、ログさんから教わりました」


 クレディオス様がうんうんとこちらを見ながら頷いている。布石としては合格って事かな?


「そう。君達が初の光と闇の神術使いになる。ちなみに各属性毎に司る神々がいるのは知っているかな?」


「はい!神官様の教典で学んでいます」

「ん!」


 神官の教典ではこの世界の神々についての説明がしっかりとなされている。


「その中に光と闇を司る神はいたかな?」


「・・・いません」

「・・・」


「そう。ボクはね。人族の中からも神に昇華する者を求めているんだ。だからきっかけを人族に与えることにしたんだ。——そう、その技能スキルは神に昇華する可能性そのものなんだよ!」


 ビシッと二人に向かって指を指すクレディオス様。


「「・・・」」


 二人は絶句、沈黙である。


「あ、あれ?そこは『何だってー!?』とか、リアクションがあるところでしょ?」


「ボス、何言ってんだよ。そんなこと人族がいきなり言われたら混乱して固まるに決まってんだろ?」


「そうですね。クレディオス様にしては焦りましたね。ちょっと今の流れはどうかと思います」


「そ、そんな..」


 ウォーラ様と僕からの口撃により、膝と手をついて項垂れるクレディオス様。


「わ、私達はどうすれば・・」


「んん!特別なことをしてもらおうとは思ってないよ。だから神になるという話は気にせず、今まで通りログ君と一緒にいるといい。これから世界も見て色々な経験を積みなさい」


「「は、はい!」」


 即座にリブートするクレディオス様。何があっても最後はしっかりと締める創造神、流石である。

 この後、悪魔の調査については後ほどということになり、それまでは休憩することにした。


 僕の部屋でお茶をするいうことで3人で部屋に向かっている途中、


「ログさん、私達はこれからどうすればいい?」

「ん」


「ん?さっきクレディオス様が言った通りだよ。僕達は冒険者パーティーだ。予定通り、組合の依頼を受けながら世界を見て回ろう」


「何も変わらなくていいってこと?」

「・・・」


「そう。変わる必要はないよ」


 僕は笑顔でそう答えてあげる。

 やっぱりクレディオス様にはああ言われたけど不安は残ってるんだな。


「わかったよ。これからもよろしくね」

「旅、楽しむ」


「ああ!これからもよろしく」


 二人に笑顔が戻る。まだ二人は少女なんだ。難しい話は数年後とかでもいいんだ。


「あ、あと悪魔?についてもちゃんと教えてね?」


「確かに!ちゃんと話すよ、でも覚悟して聞いてね」


「もうちょっとやそっとじゃ驚かないよ」

「そう、耐性が上がった」


 このあと、お茶をしながら僕のことも含めて説明した時の二人の反応はお察しである。耐性が上がった?まだまだ甘い。



 ——僕はカップを口につけながら考える。


 世界の変化、神々の変化、そして突然の悪魔の襲来。

 この後の悪魔の調査でまた色々な事実がわかっていくだろう。


 わかったことから対処していけばいい。とにかく…僕らは世界を旅しよう。













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ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

この話にて二章が終了です。間話を1話ほどはさみ、三章を始める予定です。

三章では、ウォンダを舞台にログが新たな試みを始めます。


三章開始まで数日、更新の間があいてしまう予定です。


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タイムトラベル転生者—異世界のゲーム知識と神々の力を合わせてみたら凄いことになったので過去から未来を改変していこうと思います— 脱兎 @datolu

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