ホワイトデーな二人【クラスの訳あり女子の悩みを溶かしたら、甘々彼女になった。】

あすれい

第1話 

 学校からの帰り道、俺の腕を抱き締めてニコニコ顔で歩く栞を見ながら、俺は少しだけドキドキしていた。


 今日はホワイトデー。去年までは全くと言っていいほど縁のないものだったけど、今年は違う。


 去年の夏休みに栞と付き合い始め、色々ありながらも順調に仲を深めてきた。


 そしてバレンタインデーには、それはもう気合の入りまくったチョコをもらった。しかも栞の手作りで。


 それを栞の手ずから食べさせてもらって、お返しに栞にも食べさせてあげて、当然それだけで満足できるはずもなくイチャイチャして。


 幸せなあま〜い時間を過ごさせてもらったわけだ。毎度のことだけど、イチャイチャがエスカレートしてそりゃもう色々と……──。


 コホンッ。


 まぁそれは今はいいだろう。とにかく嬉しかったんだ。


 今日はそのお返しを渡すつもりでいる。当然気合も入る。


 誕生日にプレゼントを渡したこともあるのでこれが初めてというわけではないが、プレゼンントを渡す前というのはやっぱり緊張するのだ。せっかくなので喜んでもらいたいし。


 すでに渡す物自体は用意して、自室の机の引き出しに忍ばせてある。栞は他に用事がない限り、ほぼ毎日うちに寄っていくので帰ったらすぐに渡すつもりだ。


 タイミングとか渡し方とか下手に小細工をしようとするとボロが出そうなので、直球勝負。


 というわけで、栞を伴って帰宅し、いつものように俺の部屋へと招く。


「栞、ちょっと目閉じて、手出してくれる?」


「えっと、こうでいい?」


「うん、ありがと」


 栞ももちろん何の日かはわかっているので、ワクワクした様子で俺の言った通りにしてくれた。その間に引き出しから綺麗にラッピングされた小箱を取り出して、栞の手の平にのせる。


「目、開けていいよ」


 ゆっくりと目を開いた栞は小箱をじっと見つめて。


「バレンタイのお返しだよ。気に入ってくれるといいけど」


「涼が真剣に考えてくれたものなら私なんでも嬉しいよ。ねぇ、開けていい?」


「もちろん」


 俺が答えると、栞は慎重にラッピングを解いていく。やがて中から出てきたのは一つのブレスレット。細身で花のモチーフ、きっと栞によく似合うと思って選んだんだ。


「わ〜、可愛いっ!!」


 チョコのお返しにアクセなんて重いかなぁと思ったけど、それも今更だ。俺達は互いに想いが重すぎるのを自覚している。


 ネックレスも指輪も既にペアのものがあるので、今回はブレスレットにしたのだ。


 ホワイトデーにブレスレットを送る意味を調べたりしたわけだけど、『束縛』と『独占欲』とかばかりが出てくる中、『そばにいたい』というものを見つけたのが決め手になった。


「ねぇねぇ、涼。これ、涼がつけてよ」


「うん」


 ブレスレットを受け取り、差し出されたその手首を通すと栞はふわりと微笑む。


「どう、かな?」


「思った通り似合ってる。可愛いよ、栞」


 まだ照れくさいけど、こういうことはちゃんと伝えるようにしてるんだ。


「えへへ、嬉しいな。ねぇ、涼?」


「ん、なに?」


 栞は俺に抱きつき、背伸びをして耳元に口を寄せる。


「あのね、涼。私のこと、ずっとはなさないでね?」


「うん、もちろん」


 俺の選んだ意味を、栞は勘違いせずにちゃんと汲んでくれるらしい。ずっと側に、一緒にいたいというその意味を。


 それが嬉しくて、俺は栞をぎゅっと抱きしめた。


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ホワイトデーな二人【クラスの訳あり女子の悩みを溶かしたら、甘々彼女になった。】 あすれい @resty

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