はなしなさい

バンブー

私に自由なんてなくってよ

 わたくしはこの家に監禁されていますの。

 檻の中に入れられる時もありますわ。

 ご飯は定期的に出してくれますの。

 けれど、最近少なくされていってますわ。

 トイレも見られながらしますの。

 私には首輪が付けられておりますわ。

 私が逃げてもわかるようにですの。

 ああ……なんて私は可愛そうな乙女なの。

 これも悲しき、私の運命……


「おい、外行くぞ」 


 くっ……出やがりましたわ。

 このムカつくつるっパゲが私の自由を奪う張本人。私の首輪に紐をつけて私が裸のままなのに寒空の下連れ回そうとしますわ!

 ちょっと止めなさいハゲ!

 レディの裸を公衆の面前に晒そうなんてなんてハレンチな男ですの! 


「おい! 抵抗するんじゃあねぇ! とっとと歩け!」


 私は裸が恥ずかしいのに、この男は無理矢理外へ連れ出してきやがりますわ。

 許せませんわ……コイツ。

 もう、イヤ!

 こんな人権もない生活イヤ!

 歩いている人達の目の前で私の豊満な全裸ボデイを晒して歩くなんて耐えられない!

 ンムキィィィィィイイ私は必死に紐を引っ張って抵抗しますわ!


「ふざけんな! 俺だってこんなめんどくせえ事したくねぇんだよ!」


 つるつる頭の強面男の力に乙女の非力な力はかなわず、私は引きづられるようにして外へ出る事になりましたわ……

 見ていろよこの男……


〜〜


 しばらく見慣れた道を歩いていると、催しておしっこに行きたくなってきましたわ。

 ちょっとハゲ、私お花摘みに行きたいから早く帰りますわよ。


「おー! 見てみろよ。こんな所にバッファローみたいな角の虫がいるぜ! なんだコイツは? カメムシか?」


 葉っぱに付いた虫ケラ如き、ハゲの心が奪われていますわ!

 ああダメ……私のお腹も薔薇に水やりをしたがってやがりますの……

 ……ここは緊急事態。

 せめて隠れながら、電柱の側で事なきを……


「あ、見てみて! 犬!」

「本当だ。なんか太ってる?」


 いやああああああ!?

 小娘JC共に私のスッポンポンが見られてますわああああ!

 何とかしなさいよこのハゲ!


「お、検索したら、カンボジアに生息しているバッファローツノゼミっていうのか」


 も、もうダメ……もれ……もれ!

 ウソよウソよウソよウソよウソよ!

 いやああああああ!



〜〜



「可愛かったね!」

「おしっこしてたけど?」


 屈辱ですわ……

 私の清らかなる聖水生成の儀を小娘共にマジマジと見られるなんて、屈辱の極み!

 とりあえず砂をかけて。

 かくなる上は、あのハゲを惑わす虫ケラ風情ふぜいを滅殺するのみ!

 その綺麗なお角ごとお命頂戴!


「あ!? 食いやがった!?」


 フン、私に恥をかかせた報いよ!

 私の糧となり朽ち果てるがいいわ!


「おいバカ犬! そんな得体のしれない物食ったらお腹壊すだろ! また病院行く事になるんだぞ!」


 はなしなさい!

 食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由で救われてなきゃダメですのよ!


「吐け! 早く吐け!」


 嫌ですわ!

 絶対飲み込みま……チョウチョ!?


「あ、おい待てオトメ!」

「ワンワン!」


 はなしなさい!

 オーホッホッホ!

 チョウチョさん待ちなさーい!

 私の糧にしてあげるわ!


「しまった! リードが抜けた! なんで肥満気味なのに速いんだよ! おい待てコラァオトメー!」

「ワンワンワンワン!」



〜〜



 迷子の犬探してます。

 名前:オトメ

 犬種:茶色い柴犬

 性別:メス

 特徴:太り気味

 性格:高飛車。何でも食べる。

 見つけ次第ここに連絡下さい!↓




 飼い主の皆さん!

 リードをはなさないでお散歩しましょう!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

はなしなさい バンブー @bamboo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ