最終話 やられ役の魔王





 エルシアの王子への復讐から一年が経った。


 残り二人の攻略対象も国外に脱出する前に捕え、エルシアは復讐を実行。


 彼女は晴れてすべての復讐を成し遂げた。


 正直、残り二人への復讐は思い出しても身震いしてしまう程で、早めに忘れられるよう日々頑張っている。


 と、ここで少し大事な話。



「とーたまとーたま!!」


「んー? なんだ?」


「すき!! 大きくなったらとーたまと結婚するのっ!! えへへ」



 うちの娘が可愛いすぎる。


 この子の名前はアイリス。

 アルシオンとの間にできた子で、竜とのハーフだからか成長が早く、言葉も生まれてすぐに覚えた。


 うちの末っ子ではあるが、まだハイハイができないお姉ちゃんたちのお世話を手伝っている。


 本当に可愛い娘である。


 おっと、誤解のないように言っておくが、他の子供たちもめっちゃ可愛いぞ。



「えへへ、とーたま♡ 大好き♡」



 ただ少し気になるのは、たまーにこの子が俺の股をまじまじと見つめていることだ。


 アルシオン曰く、竜のメスは強いオスの子供を産みたがる性質があると言う。


 ……まさか、な。



「っと、そろそろ良い子は寝る時間だな」


「やだやだ!! もっととーたまと遊ぶの!!」


「こ、こらこら。大きな声を出さない。他の子たちが目を覚ましちゃうぞ?」


「やーなーのー!!」



 アイリスのわがままを振り切ることができず、俺が困り果てていると。



「ディアブロ様、何かあったんですか?」


「む、エルシア。良いところに来てくれた。この子を説得してくれ」


「む、エルシアかーたま」



 アイリスがエルシアを見て警戒した面持ちを見せる。


 うちでは手の空いている者が子供たちの世話をするルールだ。

 そういうルールのためか、娘は自分を産んだ母親でなくても母と呼ぶ。



「こら、ダメですよ。パパの言うことは聞かなきゃメッです」


「……むぅ」


「まったくもう。アルシオンに似てわがままな子ですね。ディアブロ様、明日はもっと遊んであげてください」


「とーたま、明日も遊ぶ? 約束する?」


「んぐふっ」



 ダメだ。娘が可愛いすぎて変な笑いが出る。



「とーたま?」


「も、もちろんだ。明日も遊ぼうな」


「ん!! なら寝る!! おやすみ!!」



 シュバッとベッドに入り、すやすやと寝息を立て始めるアイリス。


 強かな子だ。あれは最初から明日俺と遊ぶ約束をするために駄々を捏ねていたな。



「ディアブロ様」



 くいくいと俺の服の裾を引っ張るエルシア。


 そして、瞳を潤ませながら上目遣いで俺を見つめてくる。


 こっちも可愛いな、おい!!



「……寝室に行こうか」


「……はい♡」



 エルシアが俺の腕に抱き着いてきて、柔らかくて大きなものが押し当てられる。


 このおっぱいを好き放題できると思うと魔剣が暴走してしまうぜ。


 しかし、ここでエルシアを抱いたりはしない。


 今日は待ちに待った日。

 この日のために数日前から俺はずっと我慢していたのだ。


 何をするのかだって? ナニをするんだよ、皆でな!!



「あら♡ もう、遅いわよ♡ ディアブロくんったら♡」


「お兄様♡ 待ってた♡」


「ったく♡ オレを待たせすぎだぜ♡」


「まったくじゃな♡ もう身体が疼いて仕方ないのじゃ♡」


「覚悟してよね、ディアブロ♡ 今日のボクはディアブロが空っぽになるまで搾っちゃうんだからっ♡」


「ほら、キリカもシャキッとしなさい♡」


「う、うぅ、フィオーネ姉さん、この格好は恥ずかしいです♡」



 俺の愛しい妃たちが並ぶ。


 それもサキュバスたちが作ったとびきりエッチな衣装を着て。


 露出全開チアガール、超ミニスカ婦警、ドスケベナース。

 果てはアイドルのような衣装や動物のコスプレまで。


 最高です。



「ディアブロ様♡ 次は男の子と女の子、どちらが良いですか?」


「うーん。両方可愛いだろうけど、一人くらいは男の子が欲しいかも」



 エルシアたちとの間にできた子は、全員女の子だった。


 いや、女の子は女の子で可愛いけど、やっぱり息子と一緒に出掛けたり、お風呂で背中を洗ってもらいたかったりする。


 子供たちとダンジョンでレベリングというのも乙かも知れない。


 ご飯も一緒に食べて……。


 あ、いや、でもあの子たちの主食は基本的に人間になるのか。


 うーむ。


 やはり元人間としては多少の引け目があるが、好き嫌いは駄目だよな。


 今度チャレンジしてみるか。


 バルザックのお陰で人間牧場の方も上手く行ってるし、万事順調。

 前世の記憶を取り戻した時はどうなるかと思ったが、中々どうして最高の人生、いや、魔王生だな。



「ディアブロ様?」


「あぁ、いや、すまん。何でもない」


「……そうですか。ところで、一つお訊きしたいことがあるのですが」


「ん? なんだ?」



 エルシアが笑顔のまま言う。



「私の副官、マロンちゃんが最近妊娠したんです」


「そ、そうなのか?」


「前にどうしても私たちの都合が合わなくてディアブロ様の性欲を鎮めるようお願いはしましたが、その一回で妊娠したとは思えません」


「……」


「したんですか?」


「……しました。我慢できなくて、何回か、つい」


「……まったくもう。本当に仕方のない人ですね」



 人ではなくて魔王だが。


 エルシアが溜め息をしながら、俺をドンとベッドに押し倒す。



「他の人に出した以上の量を出してくれないと、怒りますからねっ♡」


「……はは。エルシアには敵わないな」


「あんっ♡ ディアブロ様ぁ♡」



 それから数十年後。


 大きくなった娘たちに赤ちゃんが欲しいと迫られたり、孫たちが世界征服に乗り出したり、色々なことがあるけど、それはまた次の機会に話そうと思う。


 すべての始まりはあの時、攻略対象を返り討ちにした日だった。


 そうだな、題するなら『やられ役の魔王が攻略対象を返り討ちにしたらヒロインが生贄として送られてきたんだが。』とかどうだろう?


 あ、今はむしろヤる役の魔王かな?











―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「良い感じに終わった気がする(残りの攻略対象への復讐描写が無かったことには目を逸らしながら)」


デ「あ、うん。せやな」


作者「新作『捨てられ王子が最前線で敵国の兵士を治療したら実は第七皇女だった件』も暇な方はどうかご覧ください。面白いと思ったら★をください。また怒られないよう、エッな描写は控えめな作品になる予定(しないとは言ってない)です。暇な時にご覧ください。それでは皆さん、ここまでのご愛読、ありがとうございましたー」



「残り二人の復讐描写――おっと誰か来たようだ」「面白かったで」「新作待ってます」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

やられ役の魔王が攻略対象を返り討ちにしたらヒロインが生贄として送られてきたんだが。 ナガワ ヒイロ @igana0510

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ