ささくれ ~*アウルとR-1
RIKO
ささくれ ~ *アウルとR-1
アウルは幼い頃からいつも一人だった。世界的に著名な科学者である両親は、常に研究に忙しく、家にほとんどいなかったからだ。しかし、アウルが寂しさを感じることはなかった。なぜなら、彼にはいつも、親のように、助手のように、そして友人のようにそばにいてくれるロボット、Robo-Aid Alpha1(通称:R-1)がいたからだ。
「ぼくとR-1はいつも一緒だよ。だって、僕たちは最高の友達なんだからね」
アウルはR-1が大好きで、R-1もまたアウルが好きだった。それがプログラムによるものかどうかは定かではないが、二人の絆は確かなものだった。
R-1はスチール製の人型ロボットで、アウルと同じくらいの背丈だった。アウルはR-1に自分と同じ服を着せたがった。だから、彼の母は子供用のTシャツと同じ柄の服をR-1用にも用意しなけらばならなかった。
「僕たち、お揃いだね」
アウルにそう言われた時、同じ横縞の服を着たR-1は、何となく嬉しそうな顔をしているように見えた。
冬のある日、アウルが学校から帰ってくると、手にささくれができていた。R-1はそれに薬を塗ってくれた。
「R-1には寒くたって、ささくれなんてできないよね。僕たちはお揃いになれないんだね」
アウルが悲しそうにそうつぶやくと、R-1は何かを考えるような表情をした。その後、R-1は自分のスチール製の指先を
数日後、錆びた指先をアウルに見せながら、R-1は言った。
「ササクレガ デキマシタ。クスリヲ ヌッテ クレマスカ?」
アウルが錆落としスプレーを吹きかけると、R-1の指先は再び輝きを取り戻した。
「オカゲサマデ ナオリマシタ」
アウルは嬉しそうに微笑んだ。R-1も、どこか満足そうな様子だった。
* *
アウルが大学に進学し、ロボット工学を学び始めた時も、R-1は彼の勉強を熱心にサポートした。アウルが両親と同じ道を歩み、ロボット工学の研究者となった後も、R-1は常に彼の信頼できる相談相手だった。
そして、アウルが年老いて引退し、最期の時が近づいた時も、R-1は彼の枕元で、彼の好きな歌を歌い続けた。
人間は歳を重ねるごとに弱くなるが、ロボットは進化し続ける。しかし、R-1はリニューアルを拒否し、部品交換も行わなかった。それはR-1自身の選択だった。アウルが亡くなり、彼の妻と子どもたちが棺に花を手向けた時、R-1の機能も静かに停止した。
アウルが土に還るその日、R-1はスクラップ工場へと運ばれた。アウルの墓に手向けられた花から一片の花びらが風に舞い上がり、R-1の後を追いかけていった。
了
ささくれ ~*アウルとR-1 RIKO @kazanasi-rin
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