夜ごとゴトゴト
伏見同然
夜
怖い話を自分の体験談で話す場合、今目の前で話してるお前無事じゃんってことで、緊張感減るよね。今回は俺の体験した話なんだけど、俺が無事かどうかはまだわからない。というのも、これは体験する前に書いてるから。
今は木曜日の夜十一時。これから自宅に帰るところ。家に着いて玄関のドアを開けたら、なにか奥から物音がするはずなんだ。でも、今は一人暮らしだしペットも飼ってないから、その音のする方を気にしながら、ゆっくり家の中に入っていくことになると思う。ここら辺で「なんだか様子が変だな」とか感じればいいと思う。
連続的にゴトゴトって小さい音がしていて、洗濯機とか冷蔵庫とかが立ててる音かなって想像するはず。でも、その音をもっとよく聞くと、コッコッ..というような籠った音で、機械から発せられるものとは違うように感じられるんだろうな。そのとき、本能的にそれが何か生物的なものから出ている音だってわかるはず。息を吸いたいけれど、うまくできずに喉が締まって、声も出せない。本人の意思とは関係なく肉体が発してしまっている鈍い音。あいつが生きようともがいていた音。俺の手で止めた音。
今からあの家に帰る。あの音が再び聞こえてきて、恐怖の夜が始まればいいのかな。絶望して悔やめば、許してもらえるかな。
夜ごとゴトゴト 伏見同然 @fushimidozen
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