ささくれスレイヤーがやってきた!

五十貝ボタン

ささくれ対策には笹塊製薬の保護クリーム!

 こんにちは! 五十貝ボタンです。


 私は毎年、冬になるとに悩まされています。

 今年も、右手の人差し指の爪の箸が割れてトゲみたいになっちゃってたんです。ズキズキ痛いし、服の袖に引っかかったりして困ります。何より、キーボードを打つときに痛いのが悩みの種。


 でも、ささくれができちゃったらどうすればいいんでしょう?

 毛抜きなんかで抜いちゃうこともあります。でもそうすると、血が出たり痛みがひどくなっちゃう場合もありますよね。

 小さいケガだから我慢すればいいだけなんですが、小説を書くのは集中力の勝負です。チクチクするととても気になって、どうしても書く邪魔になってしまいます。

 でも、抜かないと抜かないで気になっちゃうし・・・。


 しかたない。

 迷った末に、私はささくれを抜くことにしました。デスク横の棚から毛抜きを取り出したとき・・・。


「待てぇーい!」

 ガシャーン!


 窓を突き破って何かが飛び込んできました!

 その何かは1080畳の部屋の端まで転がって壁にぶつかり、のっそりと起き上がりました。

 甲冑に身を包んだ男です。身長は2メートル近くの大男でした。

 いったいどうやって地上610階のこの部屋の窓まであがったというのでしょうか!


「私はささくれスレイヤーだ」

 甲冑の男は仁王立ちでそう言いました。どうやって入ってきたか聞いたんですが。あと窓はどうしてくれるんだ。

「ささくれどもは皆殺しだ」

 彼は巨体に似合わぬ身のこなしで僕の手から毛抜きを奪い取りました。

「ささくれは絶対に抜いてはいけない!」

 そして毛抜きをへし折りました。折らなくてもいいだろ!


「・・・。」

 ささくれスレイヤーは甲冑の隙間から私を見つめていました。 何か聞かないと何も言ってくれなさそうでした。私は勇気を振り絞りました。

「もしかして・・・ささくれの対処法を知ってるんですか?」

「そうだ! 私と一緒にささくれを皆殺しにする方法を学んでいこう!」

 そういうことになりました。


 🩹


「そもそも、ささくれがどんな症状なのか君は知っているか!」

 えーと・・・指の皮や爪が剥けて、指先がちくちくしちゃってるようなことを言うんですよね。

「そうだ。しかし、それだけではない」

 というと。

「人間の体には体表を守るためのバリア機能がある。しかし、そのバリアがうまく働かなくなると、皮膚が剥がれたり、爪が割れたりしてしまうのだ。その危険が最も高いのが、体の末端で酷使される指先だ」

 ささくれスレイヤーは籠手に包まれた手をぎゅっと握って主張した。


 でも、指がちょっと痛いだけだし、しばらく放っとけば治るんだからそこまで気にしなくてもいいんじゃないですか?」

「とんでもない!」

 ささくれスレイヤーの迫力は稲光を背負わんばかりだった。

「ささくれが悪化すると表皮のみならずその奥にある真皮まで傷ついてしまう場合がある。すると痛みは長びいて治りも遅い。それに、ささくれから菌が入り込んで化膿するおそれもある! 小さなケガだからと放置してしまうと、取り返しのつかないことになってしまうんだ!」

 確かに、指先のケガからばい菌が入って大病を患ったなんて話を聞いたことがあります。小さな傷が命取りになるかもしれないんですね。


「ささくれには、大きく分けてふたつの原因がある」

 ささくれスレイヤーが二本の指を立てた。

「ひとつは乾燥だ。空気が乾いていると皮膚や爪の水分が失われてしまう。生木はなかなか折れないが、乾いた枝なら簡単に折れるだろう。同じように、皮膚や爪も水分を含んでいる状態のほうが傷つきにくいんだ」

 なるほど。もうひとつの原因は?

「外部からの刺激だ。特に多いのは水仕事だ。水道水や洗剤で手の表面の皮脂が奪われて、バリア機能が弱まってしまうんだ。子どもの砂遊びでも手が傷つく場合があるぞ」

 その異様な外見にもかかわらず、ささくれスレイヤーはちゃんとした知識を繰り出してきた。


「これまでの話は分かったかな?」

 少しずつ分かってきました。ささくれは深刻なケガや病気につながる場合もあるし、乾燥や刺激が原因で引き起こされるものなんですね。

「その通りだ。甘く見てはいけない」

 でも、どうやってささくれを防いだらいいんでしょうか。それに、ささくれができてしまったら?


「まずは対策について語ろう」

 ささくれスレイヤーは私の1080畳ある書斎を見回した。

「この部屋は乾燥している! 部屋が乾燥していると手も乾燥してしまう。加湿器などを使って、部屋の湿度が下がりすぎないようにするんだ」

 えっ! 部屋の乾燥がささくれの原因になるんですか!

「そうだ! 冬は空気が乾燥している。外出するときには手袋をするのも効果的だ」

 だからささスレさんも籠手つけてるんですか。

「そうだ!」


 でも、水洗いしないわけにもいかないでしょう? 手を洗うのも大事だし。

「手洗いや水仕事をした後は、きちんと水を拭き取ることだ。手についた水滴が乾燥するときに、皮膚の中の水分も一緒に奪われてしまうからだ。そしてきちんと拭いたらハンドクリームを使って、手を保湿するんだ!」

 手洗いの後はハンドクリームですか。でも、ハンドクリームってべたつくからなあ。

「そんなときは笹塊製薬ささくれせいやくのハンドクリームだ! 使い心地がサラサラでケアもばっちりだ!」

 そりゃすごい! キーボードも汚れないし、完璧ですね!


 でも、いくら対策をしていてもささくれができてしまったらどうすれば? 毛抜きを使うのはいけないんですよね。

「皮膚を傷つけてしまうから抜いてはいけない。他のものに引っかからないように、ささくれを切除するんだ」

 切除というと、どうやって?

「可能ならニッパー型の爪切りを使うのがいいが、パチンとやるテコ型の爪切りでもいい。そのあとは、ささくれから菌が入らないように絆創膏などで保護するんだ!」

 ささくれを切って、絆創膏を使うのがいい、ということですね。


 🩹


「それじゃあ、言われたとおりにささくれを切ってみますね」

「ああ。これを使え!」

 ささくれスレイヤーが取りだしたのは笹塊製薬のニッパー型爪切りだった。細かなネイルカットができる安心の品質が製品の特徴だ。

 ぼくは右手の人差し指にできているささくれをそっと切った。笹塊製薬のニッパー型爪切りは左手でも使いやすいように配慮されているから、切除も簡単。痛みもない。


「できました! 簡単ですね!」

「あとは絆創膏で保護だ!」

 ささスレさんは笹塊製薬の指先用絆創膏を僕の指に貼ってくれた。使用感があまりなくて、キーボードを打つときにもあまり気にならない優れものだ。


「これでささくれが悪化する心配はない! 小説を書くなら指の保護は何よりも大事だからな!」

 ありがとう、ささくれスレイヤー!

「笹塊製薬からは小説家を応援するための指先保護キーボードや保湿対策類語辞書、ビタミンE配合のポモドーロタイマーなど、カクヨム投稿者を応援するささくれ対策製品も取りそろえている!」

 すごいや!


 でも、さっきからささくれスレイヤーは笹塊製薬の製品ばかりを推奨している。もしかして、笹塊製薬と何か関係があるんじゃ・・・。

「・・・。」

 ささくれスレイヤーは押し黙ったあと、窓に向かった。

「気づかれてしまったら、もうここにはいられない。私は次のささくれを殺しに行く」

 窓際から、ささくれスレイヤーは何かを投げてよこした。

 これは……笹塊製薬のハンドクリーム!

「さらばだ! 手の保湿を忘れるな!」

 ささくれスレイヤーは甲冑をものともせずに、窓から飛び出していった……


 🩹


 気がつくと、私はモニターの前に座っていました。

 少し前までの記憶がぼんやりしています。いつの間にかこの記事が書かれていました。

 窓には傷一つありませんでした。ささくれスレイヤーは指先の痛みに悩む私がみた白昼夢だったのでしょうか。

 でも、デスクの上には確かに笹塊製薬のハンドクリームが残されていたのです。



※笹塊製薬は実在しませんが、もしこんな感じのPR短編を書けと言われたら喜んで書きます。

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ささくれスレイヤーがやってきた! 五十貝ボタン @suimiyama

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