ささくれを剥きたい

護武 倫太郎

ささくれを剥きたい

 皆さんはささくれができていたらどうしますか?正しい対処法は、綺麗にカットして保湿し、医療用テープ等で保護するんでしたっけ。いずれにせよ、無理に剥がすなんてことは絶対にNGですよね。


 けど僕は剥いちゃうんです。


 どうしても無意識で剥いてしまいます。やってはいけないことだと分かっていても、自分では止められません。むしろ剥きたいんです。


 爪の根元に出来たささくれは、指でむしって剥きます。時々ささくれている範囲以上に皮膚をちぎってしまい、肉までえぐれることがあります。もちろん血も出ます。痛くても剥いてしまうのです。


 爪そのもののささくれは、歯でちぎって剥きます。ささくれの根本から引っこ抜くようにちぎるので、出血します。むしろ、綺麗に剥こうとするほどに、出血してしまいます。


 ささくれが出来ていないか、僕はよく気にします。ささくれが無いなと思ったとき、僕は爪の根本の甘皮を剥きます。甘皮に爪を突き立て、ぐわっとめくります。すると、まるでささくれのように見えてきます。なので、剥きます。


 時にはささくれが出来ていない指の皮を剥きます。歯や爪で指に傷を付けるのです。その傷がまるでささくれのように思えてくるので、やはり剥きます。


 歯や爪で傷つけられなくなってきたら、ナイフで皮膚を切りそれをささくれに見立てて剥きます。手の甲や腕の皮膚は分厚いのか、歯や爪では太刀打ちできません。しかしナイフは切れ味が良すぎて、肉まで切ってしまいます。そうなってしまうと腕が痺れてしまい、皮膚を剥くどころではなくなってしまうのが難点です。


 それでも僕はささくれを剥きたいのです。何か他に良い方法はないでしょうか?


 そう思いながら、僕は普段どおり大学に向かいます。


「おはよう。腕の怪我大丈夫?」


 心配そうに同期のまことが声をかけてくれます。心配をかけてしまったでしょうか?


「大丈夫です。それより真こそ大丈夫?右親指にささくれできてますよ・・・・・・」

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