第3話 再会
その銀造に、先週、ばったりと出会ったんだ。
新橋の居酒屋だよ。
独りでカウンターで飲んでいたら、隣に見事な白髪の男が座ったんだ。
どこかで見た顔だなと思っていたら、あっちが先に気付きやがった。
「……あれ? あのときの刑事さん?」ってな。
「……銀造か!」
いや、驚いたね。
俺も定年で退職し、本当かどうか、銀造も足を洗って二十年も経つという。
少し酒を酌み交わし、俺はあのときのことを聞いたんだ。
「なあ銀造さんよ。
あのとき、サイフをどこに隠したんだ?」
「なんのことですか?」
銀造は最初はとぼけてやがったよ。
「もう時効だ。
ここは、俺のおごりでいいから教えてくれよ」
「分かりやした」
銀造はニヤリと笑って話してくれたよ。
「旦那にとっ捕まった時、サイフは受け取り役に渡したんですよ」
「そんなはずは無い。
お前がサイフを掏ってから、俺が捕まえるまで、誰もお前に接触していなかったはずだ。それは間違いない」
俺は、あの時のことは鮮明に覚えていたからな。それは断言できた。
「いや、一人いましたよ」
「……まさか」
それに気づいた俺は、言葉を失ったよ。
「そうです。
捕まった時、サイフは刑事さんの上着の内ポケットに移したんですよ。
あっしは、その後、身体検査を受けたんです。
何も見つからずに無罪放免。
別れ際に頭を下げて謝罪する旦那から、サイフを掏り戻したってわけです」
そう種明かしをした銀造は、うまそうにおごりの酒を飲み干しやがったよ。
箱師の銀造 七倉イルカ @nuts05
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