【三題噺】ギャンブルプリンセス!第3話

XX

3人目のギャンブルプリンセス!?

 今年も花粉の季節がやってきた。

 私は花粉症では無いんだけど、夜更かしして眠いとき「花粉症がきつくて」と言い訳してやり過ごすようにしてるんだ。

 まあ、欠伸くらいならこれで許して貰える。


 非常に便利だよね。


「とはいえ吐夢子とむこ。それであとで酷い目に遭うのはあなたなのは自覚しているの?」


 そんなことを、人気のない階段の踊り場で。

 昼休みに、先日ギャンブルプリンセスの仲間になった女の子、赤城あかぎアリスに言われた。

 彼女は日米ハーフの女の子で。とても美人。

 金髪ロングが綺麗で、正直羨ましいところがある。


 彼女はお母さんがアメリカ人。お父さんが日本人で。

 そのお父さんが数学者。


 彼女は麻雀プリンセス。

 元々、雀荘で玄人バイニン相手に、賭け麻雀で学費と生活費を稼いでいたんだけど。

 そこでカモの人たちが全員管理国家マニンゲンのせいで麻雀を辞めてしまい、死活問題に陥ったときに選ばれたんだ。


 その後私の仲間になり、人間の自由と平和のために戦ってくれている。


「大丈夫だよ。どうせテストでは毎回ヤマを張るのは変わらないし」


 そう、私は笑顔で言った。


「全く」


 そんな私を、アリスは呆れたように「しょうがないわね」という表情で黙認してくれる。


 何があっても私の「人生これ全てギャンブル」の信念は揺るがないよ!


 そんな風に2人でお話していたら


 昼休み終了を知らせるチャイムが鳴った。

 あ、もう終わりか。


 私たち2人は立ち上がり、自分たちの教室に戻った。




 5時間目は今月が防災意識の強化月間なので、避難訓練の予定だった。

 授業の途中で「地震発生」の想定で、突然始まる予定らしい。


 アリスは「突然設定なのに、事前通告してて意味があるのかしら」なんて言ってたけど、授業が途中で終わるんだから別に良いじゃん。


 5時間目は英語。

 私が大嫌いで、この世から無くして欲しい科目。


「ここの部分の和訳を……賭魚かけさかな……やってみろ」


 そして間の悪いことに、先生が私を当てて来た。

 まいったなぁ……


 授業中当てられないことに賭けて、予習全くしてないのに。


 ええと……

 If I kill him, it doesn't matter, right?


 どういう意味だ?

 分かんないよ……

 これ、本当に中2英語?


 なので私は


「……分かりません。花粉症のせいで頭が回らないんです」


 そう答えると、先生は溜息をつき


「じゃあ赤城あかぎ、分かるか?」


 代わりにアリスを指名した。


 すると彼女はスッと立ち上がり


「別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」


 即答。

 すると先生はニッコリ笑い


「OKだ赤城。素晴らしいな」


 ベタ褒め。

 クソが。


 そんな風に、私が悪態をついた瞬間。


 サイレンが鳴った。




『地震が発生しました。机の下に隠れて揺れが収まるまで身の安全を確保してください』


 そんなアナウンスの後。

 お決まり通り、校庭に集団で避難。

 おさないかけないしゃべらない。

 おかしを守り、外に出る。


 そして点呼が済み、校長先生のお話の段になったとき。


「アーハッハッハ! 地球人どもよ! この管理国家マニンゲン幹部アサーショが、お前たちに贈り物を持って来たわ!」


「チャンレンジャー!」


 ……マニンゲンのやつらが襲って来たんだ。




「人間はこの時期になると、花粉症とやらに悩まされ、仕事の効率が落ちると聞くわ。なのでそうならないように、お前たちが腹の中で飼える蟲を持って来た!」


 アサーショを名乗った幹部は女の人の姿をしていて、赤毛の美人だった。

 赤いタイツスーツを着ている。


 そいつは言ったんだ。


 私は戦慄したよ……。


「腹にこの蟲を飼えば、もう花粉症にはならないわ! 眠くなる薬なんて飲まなくて良いのよ! さあ、受け取りなさい!」


「チャレンジャー!」


 アサーショが連れて来た怪物……チャレンジャーは今回はサナダムシ型で。

 薄っぺらく、やたら長かった。


 そいつが逃げ惑う人々を捕まえて口の中に侵入。

 卵を産み付けるか、自分の断片を体内に入れて、その人を花粉症にならない寄生虫持ちにしている。


「逃げないでいいわ! この蟲は安全だから! お尻から出てきたりしないから!」


 そう、手でメガホンを作って、アサーショが呼び掛けてくる。

 そういう問題じゃ無いのに。


 問題は……


 そんなことをされたら、出来ない言い訳に花粉症が持ち出せなくなるじゃない!

 なので私は……私たちは


「そこまでよ!」


 変身アイテム「ギャンブルパクト」を手に、その前に立ち塞がったよ。


 そして即座に変身。


「プリンセス! ギャンブルフォーメーション!」


 ギャンブルパクトをパカリと開けて。

 くるり、くるりとギャンブルパクトの中のサイコロのマークを回し、数字をピンゾロに合わせる。


 その瞬間。


 私たちは光に包まれ、輝きの中変身する。


 私はピンクを基調とした可愛いドレス。

 フリフリ衣装の、プリンセスに。


 そしてアリスは青を基調とした可愛いドレス。

 フリフリ衣装と、麻雀牌の髪留めをつけたプリンセスに。


「街角の勝負師! パチンコプリンセス!」


「紫煙の決闘者デュエリスト! 麻雀プリンセス!」


 名乗る私たち。


 そんな私たちを見てアサーショは


「出たわねダメ人間の守護者! 今日こそは邪魔はさせないわ!」


 生意気にも対抗意識を燃やして、襲い掛かって来た。





 そして。


「……まずいな」


 私は思わずそう零した。

 だって……


 私の特殊技能プリンセススキルプリンセスサウザントパチンコブラスト……1000発のパチンコ玉を亜光速の速度で撃ち出し敵に浴びせる必殺技……でいくらチャレンジャーを吹っ飛ばしても、吹き飛ばされなかった部分が残ってて。

 必ずそこから再生してしまうんだ。


 ……私の技が通じない。


 そこに加えて


「やれ! チャレンジャー! 分身攻撃だ!」


「チャレンジャー!」


 チャレンジャーが、自分の一部を自切して、自分より小サイズのサナダムシに変化させ。

 それを皆にけしかけていく。


 無論、寄生するためだ。


 皆、おなかに蟲を飼うのが嫌なのか、逃げ惑ってる。


「くう、6本目!」


 ……私の隣で麻雀プリンセスが、目を血走らせながら注射針を左腕に押し込み、ヒロポンをキメていた。

 ヒロポンをキメると集中力が上がり、彼女には全てが止まって見えるようになるらしい。


 その力で、本来はパワータイプのギャンブルプリンセスである彼女は、無数に湧く小型チャンレンジャーを逃さず処理しようとするけど……


 スピードが足りないから

 正直、限界だ。


 ……どうしよう?


 決断するしかないのかな……?


 アリスの特殊技能プリンセススキルプリンセス裏ドラボムを……。


 それは自分の考案した上がり手に裏ドラが乗ると、その裏ドラが核爆発に匹敵する破壊力を秘めた爆発物に変化する必殺技。

 この核爆弾はギャンブルプリンセス以外の全てを破壊する。


 使えばこのあたり一帯焦土と化すけど……それは尊い犠牲かもしれない。


 決断するとき?

 そして


「ねぇ、麻雀プリンセス」


 私がそんな提案を、仲間にしようと思ったときだった。


「勝手なことを言わないで!」


 私たちの他に、マニンゲンに立ち向かう者が現れたんだ。




「いくら花粉症が治ったって、おなかに寄生虫を飼うこと自体を嫌がる人だっている! 無理矢理なんてやめるべきよ!」


 それはショートカットの小柄な女の子で。

 少し、小動物のイメージのある子だった。


 その子は震えながら、必死で訴えていた。


 人類の自由と平和を。


「お前、私の話を聞いていたの!? 寄生されても別にお尻から出ないのよ!?」


 アサーショはそんな彼女の言葉に、反論するけど。


「だから平気だろって、それはおかしいでしょ! 希望者だけに留めなさい!」


 一刀両断。

 素晴らしい論理展開。


 ……あの子、きっと私たちの仲間だ。

 私はそう思い、彼に呼びかけた。


「ミズハラ!」


「お傍に」


 フシュル、という音を立てて。

 人面のエリンギ。

 賭博の精霊ミズハラが現れる。


 私は言った。

 小柄な彼女を指差しながら


「あの子こそ、3人目のギャンプルプリンセスだと思う! 仲間に引き入れて!」


「御意に」


 私の言葉を受けて、ミズハラは突撃していく。


 ……ギャンブルプリンセスは合計3人。

 彼女こそ、きっと3人目。


 3人目のギャンブルプリンセスの誕生よ!


 ――次回「誕生! 競馬プリンセス!」に続く。

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