最終話 終わりの始まり
「……って、なにがand the story goes onよ! 先生、ちゃんと説明してちょうだい!」
「おお、鈴音とアメリアの魂が上手い具合に馴染んでいるな。ふっ、俺様の見立て通りだった──いでででで! って、おい、茨で雁字搦めにする奴があるか!」
ヨハネスたちから少し距離を取りつつ、影に潜んでいた薔薇の茨で先生──いや冥王クリストフを捕らえた。
前世の鈴音としての記憶が正しければ、楽しいことが大好きなお祭り好きかつ腹黒大魔王だったわ。実際は冥王だけれど!
「先生の十八番は逃げる、騙す、利用するですからね」
「クズだな。アメリア、俺がスパッと斬ってしまうか?」
「駄目よ。冥府と敵対するのは避けたいわ。ほら、先生、さっさと吐いてしまいなさい」
「知らない間にこんなに逞しくなるとな」
事務所の仕事を手伝って恩返しを──という気持ちが急激に冷める。思えば《葬礼の乙女と黄昏の夢》のゲームにハマったのも、クリストフの影響だったわ。なるほど、全て彼の計画通りって訳だったのね。
自分の世界の結末を変えるために、この世界の情報を異世界に流してゲームという形にすることで、認知度と攻略方法を模索していた。
それに運悪く前世の私が巻き込まれることになった……。
「にしても、なんで私?」
「俺様の目を見返す力強さと、法と秩序を好いていたからだ。あとは──俺様と一緒に居ても影響が出なかったというのが大きい」
「そういえば弁護士としては有能だったけれど、女関係ではとっかえひっかえだったような?」
「あ・れ・は、体質の性だ! 俺様は基本的に一途なんだぜ」
「「信じられない」」
私とウィルフリードは同時に答えた。一途というのはウィルフリードのような人をいうのだ、間違ってもクリストフではない!
「それで、めでたくこの世界の終末回避だから戻ってきたの?」
「そうであったのならよかったんだが……。ジュノンの古塔を破壊しただろう? あれのせいで深海の超魔獣が目覚めたらしい」
「は?」
「え」
「それと帝国や周辺諸国が、この国に興味津々のようだ」
ジュノンとそっくりなのに、意地の悪い笑みをみると何だか腹黒さが浮き立つ。とにもかくにも、一難去ってまた一難。
帝国ってことはあの攻略キャラが?
建国式はなにかあるって考えるべきよね。あ、だからエルバートや
深い溜息が出たが、傍にいるウィルフリードを見たら少しだけ気持ちが上昇する。クリストフの茨を解除しつつ、ウィルフリードに問う。
「また忙しくなりそうだけれど……ウィルフリード、付き合ってくれる?」
「もちろん、俺は君の盾であり剣なのだから、何処だろうとなんだろうと傍にいる」
「それなら何も問題ないわね」
貴方が隣いるのなら、不思議と不安はないのだから。
ウィルフリードへの思いを自覚できただけ今は良しとしよう。ただちょっとだけ関係を縮めるために、少しだけ背伸びをしてみる。
ああ、なんだか吸血鬼女王でも、復讐者でもなくて、ただのアリシアとして行動を起こせた気がする。
私からのキスは初めてだったけれど、甘酸っぱい気がした。
この先に続く言葉をいうのは、もう少し先に……。ううん、気持ちはちゃんと伝えないと。そう思って唇を開いた──。
お望み通り、闇堕ち(仮)の悪役令嬢(ラスボス)になってあげましょう! あさぎかな@電子書籍/コミカライズ決定 @honran05
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