第41話 and the story goes on……??
「少しは記憶の整理ができたといいんだが」
「やっぱり、今日のデートは、そういう意図があったのね」
「それもある。だが、一番はアメリアとの距離感を縮めたいと思った」
「記憶を失った私は令嬢らしい振る舞いをしていたし、ウィルフリードは忙しかったものね」
「ああ。今ならアメリアが王太子授与式に向けて、必死に力を付けようとしたのかがわかる。どんなに予測できて準備していても、上手くいくかはわからない恐怖は常に付きまとっているからな」
「ええ、どんなに備えてもやっぱり不安は拭えないものだし。……でもそれに耐えて準備をして最善を尽くしたからこそ、今がある」
「そうだな」
「それと……過去の私が頑張れたのは、ウィルフリードが傍に居てくれたからだわ」
「その言葉をそっくりそのまま返そう」
どちらともなく笑みが漏れた。
うん、やっぱり記憶を取り戻してウィルフリードと一緒に居る時間が増えるたびに、好きだって気持ちが溢れてくる。
推しとしてもあるけれど、今までアメリアとして生きてきて、接してきた等身大のウィルフリードが──。
「きっと好きなのね」
「アメリア?」
「ウィルフリードに昔、『ウィルフリードに死んで欲しくないわ。だから、私たくさんお金を稼いで、強くなってウィルフリードが幸せになるように、ずっと傍で見守っているわ!』って言ったのを覚えている?」
「もちろん、一言一句忘れずにいる」
「え。あ、うん。あの文章を少し訂正。ウィルフリードと一緒に幸せになりたいのだけど、ずっと傍に居てくれる?」
「では、俺はアメリアが笑って共に幸せになるよう、貴女の剣として、また伴侶として隣に立つ存在でいさせてほしい」
ウィルフリードは私に剣を捧げた言葉を少しだけ変えて答えてくれた。
その返答が嬉しい。
嬉しいのだけれど!
「え。伴侶……」
唐突なプロポーズに頭が真っ白になる。そ、そりゃあ、嬉しいわ!
でもやっと好きだって自覚できたと思っていたのに、伴侶って!
伴侶! きゃああああああああーーーー。
「……嫌だったか?」
「ち、違うのだけれど、ええっと……やっとその……好きだって、ストンと落ちてきたばかりなのに、その伴侶とかは……刺激が強いというか……。国のこともあるし、ルイスとローズが嫁ぐまでは……って思っていたんだけれど……」
「え。…………な、その可愛い反応は……ずるくないか」
ぼぼぼっ、と頬に熱が集まる。ふとウィルフリードの頬も少し赤い。
少しだけ沈黙が続いた。私とウィルフリードとの距離は拳二つ分ほど。
「アメリア」
そっと手を重ねるウィルフリードの手は、男の人の、騎士の手で、分厚くてドキドキする。鼓動が高鳴り、心臓も何だか変な音を出しているほど痛い。
自覚した途端、刺激が半端ない。
いや前々からドキドキはしたけれど、これはなんか違う!?
あと、声音が甘い?
あれ、なんかこのパターンってプロポーズもされたし、エンディングっぽいような?
この先も私たちの人生は長く続いていく。ゲームシナリオが終わったこれからこそが本番なのだろう──的な!
うん、大好きな人とのデートでの告白。良い感じの夕焼け。
ゲームシナリオだったらハッピーエンドストーリーからのエンディング曲が流れているところね。クレジットもきっと浮かんで、次にはデートから数日の日々や、ううん、アニメエンドみたいにキャラたちが踊るのも面白いわよね。伴奏はジュノンにさせて。
それに展示会のシーンも入れて、教会の玉座でシアを撫でまくるエーレンの姿も入れて欲しい。傍にはクロード枢機卿も。
あ、ジュノンのコンサート会場のシーンや、建国式は鉄板でしょう。
それから髪をバッサリ切られたテオバルトと泣き続けるエルバートも悪くないかも。ちらっと土木作業しているリリスと宰相の仕事シーンを入れても面白い!
ふふっ、なんだか考えたら面白くなってきゃった。そんなエンディングを想像しつつ、この物語なら完璧ハッピーエンドよね。
ウィルフリードとの距離を詰めようとしたが、そう簡単に幕を下ろさせてはくれないようだ。
ざわっ!
夜景の見える高台に突如白銀の魔法陣が展開して、蒼い花が一瞬で散ったのだ。
超極大魔法陣が一瞬で硝子のように砕け、消えていく。
「「!?」」
ウィルフリードは素早く私を腕の中に寄せる。格好よすぎるんだけれど!
あー、好き。どさくさに紛れてギュッてしてもいいわよね?
ギュッてしちゃった! んー、復讐が終わってちょっと浮かれている気がするしなくもない。
そんな暢気なことを考えつつも影から茨を出して臨戦態勢を整える。というか最高のシチュエーションをぶち壊したのは誰よ!
スチル並みの場面だったのに! 後脳内エンディングの気持ちの昂りを返して!
「あー、座標がズレたな。まあ、目的は達成したからいいか」
「ん?」
蒼い花びらが舞う中、姿を見せたのはジュノン似の青年だった。前世のスーツに似た服装で胸には弁護士バッチを付けている。
その姿を見た瞬間、彼が誰なのか思い出す。
「え、先生?」
「よお、鈴音。どうやら俺様の想定通り、魔神は何とかできたみたいだな」
は?
はあああああああああああああああああああ!?
ちょっとまって、私が転生した原因ってまさか──。
「ああ! やっと追いついたぞ! 冥王!」
「──っ、あの長距離を転移するとは……」
「エルバート様、大丈夫ですか?」
「ああ……って、テオバルト! また君の美しい髪が一房切られてっ……ガク」
「エルバート様!? エルバート様ぁあああ!」
なぜ従兄のヨハネスと、裏取引をして公爵の位を与えた元第二王子エルバートたちまで突然現れたのかしら。
これって……つまりあれよね。
物語は終わっても人生は続く──みたいな。
次の瞬間、何が起こるかなんて誰にも分からないのだ。
こんな風に──。
and the story goes on……??
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