6,存在のパラドックス

 タチバナデジタル動物園でのペンギン騒動は、バースの場所をまるっと別の場所に移すことによって解決することができた。そして僕はというと、ひょんなことから同居人を得、彼とともに姫路とお疲れ会、もとい三次元オフ会を開くこととなった。


「フォックスに同居人とか解釈違いなんですけど?」

 なぜかむくれた様子の姫路はあのかわいらしいアバターで毒づく。

「どんな人か知りませんけど、お母さん、許しませんからねっ」

「いつから母親になったんだよ、姫」

「フォックスがペンギンに食われて動かなくなってからずっと!」

「まあ、会えばわかるよ、ね?」


 姫路はぷんぷんと腰に手を当てて怒るようなモーションを見せた。自作だろう。


「僕その胡散臭いモデル嫌い」

「胡散臭いとか言わないでよ、クールだって言って」

「うさんくさいー!」

 新しいモデルはオシャレに気を遣ってみたつもりなのだが、姫路には不評らしい。

「もっと僕のこと好きっぽい稲荷がよかった。前のモデルに戻してー!」

 ぷんぷんを繰り返す姫路に苦笑していると、同居人に「準備ができた」と言われた。

「じゃあ、そろそろ出るね、現実リアルで会おう、姫路」



 僕は質量のないペンギンを抱えながら、を見上げて問う。

「ちなみに君は姫のことをどう思ってる?」

「姫路? 彼は彼だよ。同じ事業を手掛けた仲間」

「そう、それならいいや……」


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ペンギン・ボックス・パラドックス 紫陽_凛 @syw_rin

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