素敵な箱

鋏池 穏美


 箱──


 それは大切なものや、無くしたくないものをしまう入れ物。


 物を入れるための形のある箱や、心の中にある大切なものを入れておく、形のない箱。


 私は大切な箱を、自分のうちに持っています。


 誰にも知られたくない、教えたくない秘密をしまう箱。


 いたい、くるしい思い出などをしまうこともあるでしょう。


 みなさんは持っていますか?


 タイムカプセルや、開けると音の鳴るオルゴールなんかも素敵な箱ですね。


 初恋の甘酸っぱい記憶を詰め込んだ、心のうちにある箱なんかも、とっても素敵だと思います。


 そういえば、つい先日実家に帰った際も、素敵な箱に出会いました。


 私が幼少期に「これは私の宝物だから──」と、ビー玉や、角の取れたガラス片、可愛いお菓子の包み紙や、金色や銀色の折り紙で作った折り鶴を入れた、元はクッキーの入っていた箱。


 私にとっては宝箱だったけれど、他の人にとってはガラクタ箱だったんだろうなぁと、昔を思い出し、少しセンチメンタルな気分になってしまいます。だけど──


 そんなガラクタ箱、もとい宝箱を捨てずに持っていたということは、両親にとってもかけがえのない思い出の箱だったのかなぁと思い、聞いてみると──


 「捨て忘れただけよぉ」と、少し恥ずかしそうに笑った顔が印象的でした。


 ああ、そうだ! せっかくなので、私の大切な箱の中身をみなさんに見せようと思います。


 そう言いながら私は、大小様々な箱を自室からリビングへと持ってくる。箱にはラベルが貼ってあり、それぞれ「頭部」「胴体」「右手」「左腕」など、部位ごとにしっかりラベリング。もちろん可愛い文字で書きました。


 あっ! 保存場所は業務用の冷蔵庫で、防腐処理はしっかりと施していますから! 変な匂いなんてしないので、安心して下さいね?


 え? これが何かって?


 これは私の大好きな彼を小分けにして、保存しておく箱ですよ?


 そう──


 私は自分のうちに、大切な箱を持っているんです。


 遺体いたいをしまう、大切な箱を──

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