箱の中身は溢れる才能

うり北 うりこ

第1話


 赤、青、白、黄、ピンク……。 

 色とりどりの箱が私たちの前に並べられた。

 

「好きなものを選んでください」

「何が入っているんですか?」

 

 活発な子が質問をすれば、開けてからのお楽しみだとシスターは言う。

 その言葉に、みんなは次々と箱を手にした。

 綺麗な色から選ばれ、私は最後の箱に手を伸ばす。

 

「メイラは、それでいいのですか?」

 

 ひとつ頷き、真っ黒い箱を見る。

 

「部屋に帰ってから開けてみてください」

 

 みんなは楽しそうに部屋へと向かっていった。そのうしろ姿を見送りながら、私は黒い箱をシスターへと返す。

 

「いらない」

「なぜです? きっと、メイラの助けになりますよ」

 

 にこにこ顔のシスターは諭すように言うが、私は首を横に振った。

 

「いらない」

「他のが良かったんですか?」

「ぜんぶ、いらない」

 

 そう言った瞬間、強い力で箱を持たされた。

 

「これはメイラのです。持ち帰りなさい」

 

 首を横に振る私の背を押し、シスターはもう一度念を押した。

 

「死にたくなかったら、箱を開けなさい。それが、ここで生きる条件です」

 

 箱を抱え、唇を強く噛む。

 

「うわっ!! 何だこれ!!」

「わぁ!! すごーい!!」

 

 みんなの部屋からは楽しそうな声が響いてくる。

 それでも、私は箱を開けたくない。この箱だけではない。すべての箱を。

 

「しらないから、よろこべるんだ……」

 

 箱の中身は、特別な儀式から生み出されたもの。

 赤は身体を強化し、青は知能を上げ、ピンクはフェロモンで異性を惑わす。

 その力は、すべて生きていた人間から抽出したもの。

 

「わたしは、あけない……」

 

 父と母も儀式の犠牲になった。

 世界の秩序のためだなんて、嘘ばっかり……。


 

「あれ? 何で開けないの?」

 

 振り向く前に、赤い箱を持っていった子に強い力で引っ張られ、無理矢理箱を開けさせられた。

 目の前が大きく歪んでいく。

 

「あぁ。メイラは憎悪を抽出したものか……」


 クスクスと笑う声が頭に響き続ける。


 クスクス……。

 クスクス……。

 

 永遠に、いつまでも──。

 

 

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箱の中身は溢れる才能 うり北 うりこ @u-Riko

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