第29話謎の少女

 朝日が目蓋を刺激する。失神するかのように眠りについてから丸3日バキュアは眠っていた。その側には先程の少女が静かに佇んでいた。他には誰もいない。皆少女のことを全面的に信頼しているようだ。


 「うーん、おにーさん起きないなー。ちょっと突っついてみようかな!」


 少女の手にはアイスピックが握られている。既に誰かの血が付いている。


 少女がバキュアの足の裏に狙いを定めててアイスピックの先を向ける。1度自分の方へ引き、勢いをつける。


 「そーれ!」


 ブスッ


 少し深めにアイスピックが刺さる。アイスピックがぴったりと刺さっているせいで血はでない。バキュアの体がビクンッと跳ね上がる。


 「………。痛」


 思ったよりも薄い反応でバギュアが目を覚ます。少女は内心面白く無いと思った。


 痛みを感じた足の方を見る。角度的に見えはしないがなにか刺さっているのは用意に想像できる。側には少女が立っている。


 (この子供にやられたのか?いや、おそらく違う。驚いた雰囲気を隠しきれていない。)


 少女はとっさに驚いたように見せた。バキュアは読心術に長けていないためか見抜くことができなかった。それよりも今は重要なことが頭にはあったというのも大きいのかもしれない。


 (そうだ、シンは?それと俺はどのくらい寝ていたんだ?)


 「なぁ、そこの…えっと、名前は?」


 「バンユエです。あなたは?」


 (バンユエ?最近どこかで見た気がする。)


 疑問を持ちつつも先を急ぐため話を続ける。


 「俺はバキュアだ。早速ですまないが俺がここに来てからのことを教えてくれないか?」


 「もちろんだよ。おにーさんは1度目覚めたあれから丸3日も眠ってたんだよ。まぁ、しかたないよね?もともと命に関わるような大怪我をしてたんだから。」


 バキュアは驚愕する。アラゾキアを出てから既に4日いや、今日で5日目だということに。だが、それよりも優先すべき問題がまだ残っていた。躊躇いながらもそれを口にする。


 「俺の、俺の他に誰かいなかったか?黒髪で赤い瞳の顔つきの整った男とか…。」


 「いや、具体的すぎでしょ。まぁでも、いたよ。ただ…」


 バンユエは口ごもる。


 「なんだ?何かあったのか。まさか、死んでたのか?」


 「いやいや、全然元気そうだったよ。ただ、君を置いてアラゾキア方面に歩いておってるとこを見たってだけ。大事な人なのかと思ったからちょっと躊躇っただけ。」


 (シンは俺を見捨てたのか?だが、なぜ俺にとどめを刺さなかったんだ?完璧主義のあいつならやっただろうに。いや、あいつの言葉を思い出せ。あいつは、俺を試すと言った。それならばまだ試練は続いているのではないだろうか。とりあえず紅茶を探してロフォンスのもとに届けよう。)


 バキュアはベットから勢い良く起き上がる。


 「それじゃぁ、俺はもう行く。あっ、そうだ、助けてくれたこと感謝する。」


 少し照れくさそうに感謝の言葉をこぼす。


 バンユエは顔を歪めないようにするのに精一杯でった。バキュアはドアを開けそとへ出る。


 「あの、私も一緒に行きたい!いいかなー?」


 少し考えたあとバキュアは答えた。

 

 「危険なことがあるかもだがいいか?責任はとらないぞ。」


 「うん!」


 少女とバキュアはならんで歩く。方や黒ずくめ。方やかわいらしい少女。異色の雰囲気を醸し出した2人は周りの目をすごく引く。本人たちは気づいていないようだが…。

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かくれんぼしましょう? 天羽隼人 @gest2424

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