第28話DEAD OR ALIVE
「よいしょ!かんせー。さーて、起こすか。」
シンはバギュアに水をかけ夢の世界から引き戻す。
「あれ?シン、おまえどうやって逆さに立っているんだ?」
「…自分の格好を見てから言いなよ。普通に考えてあり得ないでしょ?」
シンは呆れる。バキュアはなぜ自分がこのような状況なのか理解できていないようだ。
「ここで疑問をもった筈であるバキュア君にクイズだよ!全問正解したら見事解放。もし逆ならー…間違える毎ごとにロープに切り込みをいれていきます。さて、ここで真下をご覧ください。これは僕が頑張って掘った穴です!ざっと5mかな、まぁ、全問答えられなかったら早い話死んでもらいまーす!一問も答えられない無能なんて要らないからね♡が·ん·ば·れ!」
穴は5mもあると言うだけでなく何か蠢いていた。バキュアは全身の血の気が引いていくのを感じた。逆さになっているのもあり意識が飛びそうだ。そんなバキュアをよそにシンは続ける。
「あ、そうそう忘れてた!穴のそこには毒虫を敷き詰めてまーす。全部少し刺されただけで死んじゃうやつだから気をつけてね。記念すべき第1問!僕たちは今なにをしにここに来たのでしょーか?」
「…あいつに、ロフォンスに茶葉を買って持ってこいと言われたから?」
「ピンポンピンポンだいせーかい!簡単すぎたかな?次は少し難しめだよ?第2問、僕はなぜこのような行為に至ったでしょう?」
「…お」
「ぶっぶー」
バキュアが答えを言いきる前にシンは不合格認定をする。すぐさまロープに切り込みが入る。ロープが体を支えていた柱を1つ失ったかのようにしなる。数cm程重力方向に下がったところでバキュアの全身からは脂汗がにじむ。
(こいつはまずい。あと2、3回でロープが俺の体重を支えられなくなる。もう間違いは許されない。というか、さっきのは絶対わざとだろう。俺が答えてる途中で決めつけるとかもうこれクイズじゃなくて私の考えてることはなんでしょうゲームじゃないか。無理だろ?)
気付きシンを恨めしそうなめで見るがそこにあるのは絶対零度の瞳だ。顔全体としては笑っているが目が笑っていない。ただ事実として淡々と目の前にあることを処理仕様としているシンの内心を表しているような瞳は同時にバキュアに今までにない焦りを覚えさせる。
"このままじゃ間違いなく捨てられる"と。
(嫌だ。それだけは…また1人になるなんて耐えられない。……どうにかして信用を取り戻さなくては。)
バキュアは頭を振る。考えても状況は変わらない、と。またしてもシンはバキュアの様子を伺うも無視するかのように続ける。
「第三問!君が僕に許してもらうためには今ここでなにを言うべきでしょーか?これは最難関問題かもねー!もう気づいてると思うけど、これは僕の考えてることを当てるゲームだよ。そこまで高度な技術じゃないから頑張らなくてもできるはずたよ?頑張ってね、僕は今回君を徹底して試すことにしたから。少し信用を見せた結果があれなら君との今後を考え直さないといけないからね!」
(君、か…。全く俺のことを信用してないな。これはなにをいってもダメかもしれない。これから1人になるくらいならここで死んだ方が良いのかもな…。こいつがいってた通りこの命はこいつのものだ。シンが要らないと思ったのなら潔く死ぬべきだ。)
バキュアのなかで考えがまとまった。
「殺してくれ。せめておまえの手で。俺の命はおまえのものだ、どうせなにを言っても殺すつもりだろ?ならいっそあんな毒虫どもよりもおまえの手で殺してくれないか?」
しばし沈黙が流れる。
「んー。そーゆーことじゃないんだけどなー。ねぇ、君はさ僕のためにどこまでやれる?僕が死ねと言ったらいついかなる状況であっても死ねる?」
バキュアにはシンの質問の意図はわからない。だが、先程まとまった考えは今シンに聞かれたことと一致している。それならばもちろん答えは是である。
「もちろんだ。おまえに死ねと言われれば死のう。」
シンがニヤリと笑う。
「わかったよ、ひとまずは信じるよ。」
シンはバキュアを解放する。そして一言
「じゃっ、早速ここで死んでよ!僕の死んでって言葉で死んでくれるんでしょ?ほら、はやくー。」
「もちろんだ。たった2日だったが楽しかった、ありがとう。」
バキュアは腰に下げていた短刀に手を伸ばしさやから抜く。良く手入れされた刃を自分の喉元に突きつける。目をつぶり覚悟を決める。真っ暗なためいつ意識を失ったのかもわからない。ただ感覚としては手探りで暗闇を永遠と歩いているようだ。
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目を開く。見たことのない天井だ。いや、天井だけではない。目に写る全てのものは初めて見るものばかりだ。
(ここはどこだ?俺は死んだはずじゃ?シンは?どこだ。)
「やっと目が覚めたか?おい、医者を呼べ。あと保安官もだ。」
(知らない男の声が聞こえるがうまく処理できない。)
「君、あそこの女の子が君を助けてくれなきゃ死んでたよ。感謝しなよ?でも、今は絶対安静だ。ゆっくり休みなさい。」
医者らしき年配が指差した少女を見る。見覚えがある顔をしていた。確認したいのにバキュアの意識は限界だ。また失神するかのように眠りに吸い込まれる。
「運が良かったね?おにーさん?」
少女の発する初対面とは思わないほどの含みを込めた言葉を背景に...。
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