【KAC #3】幼馴染に全ての原因がある、って事にしよう

二八 鯉市(にはち りいち)

幼馴染に全ての原因がある、って事にしよう


 私、三津田 桃香みつだ ももかの恋愛が上手くいかない理由には、心当たりしかない。


 全部、桜庭 藍四郎さくらば あいしろうのせいだ。


 私のため息は、桜庭家のリビングに落ちる。


 「どしたの?」

ソファの隣に座る、藍四郎の声。この声を聞くだけでクラクラくる人もいる、と聞いた。


 まあ無理もない。そうだろうとも思う。

 藍四郎が初めて街でスカウトされたのは、小学校2年生だったと聞く。その頃私より小さかった藍四郎は、今ではすらりと高身長。足が長く甘い顔立ち。声がよくて、微笑むだけで初対面の相手を魅了する。


 『藍四郎くんと幼馴染なんだよね? マジ羨ましいわ』

何回言われただろう。

『藍四郎くんって好きな人いそう?』

何回聞かれただろう。

『ね、この手紙藍四郎くんに渡してくれない?』

あたしゃマネージャーか!


 「はー」

「元気無い?」

「あんたみたいな奴が幼馴染のせいで! あたしは!」


 私は。

 これまで、沢山の男と付き合った。 


 ――そしてどの男も、ぶっちゃけ一か月もたなかった。


 人生で一番近い距離に居た幼馴染が――桜庭 藍四郎という男が魅力的すぎるせいで!


 「ねぇねぇモモちゃん」

「なに」

「箱の中身はボクでした遊び、しない?」

「何を言ってるの」

「箱の中にボクが入ってさ、『サプラーイズ』って飛び出すから驚いてほしい」

「絶対やらない。どこを面白いと思ったのマジで。あぁああ」

「どうしたの」

「あんた目当てで言い寄る大学の女たち全員に、普段のあんたがどんだけくだらない事しか言わないかスピーカーで聞かせてやりたい」

私はオレンジソーダを飲みながら毒づいた。すると、藍四郎は言った。

「え、それは困るかな」

「何でよ」

「えぇ~?」


 藍四郎は――頬を染め、形のいい眉を寄せてへにゃりと笑った。日頃アンニュイでセクシーな垂れ目の泣きボクロが、一気に末っ子の甘えたに変貌する。


 藍四郎は言った。

「だってさ恥ずかしいもん。これ、モモちゃんとボクだけの秘密にして?」


 私は天を仰いだ。

 絶対、とっとと、次の男見つけるぞ!

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