箱【KAC20243】段ボール箱

オカン🐷

ユウのお家

「最近、ユウは段ボール箱でよく遊ぶな」

「うん、保育園で流行っているみたい。大きな段ボール箱が欲しいって」

「よくあんなに大きな箱があったな」

「引っ越しのときに荷物を入れてきて、そのままだった箱をひっくり返して」


 良雄と祐奈が結婚し、良雄の実家をリフォームして母親のミオと祐奈の連れ子、祐樹と4人で暮らしている。

 看護師のミオは主任になって、休日返上で忙しく働いている。

 高校の体育教師をする良雄は祭日は休み、祐奈は産休で家で過ごしている。


 座敷に置かれた段ボール箱を覗いてみると、お気に入りの機関車、ゾウの縫いぐるみなどを持ち込んでいる。


「パパ、見てだめ」

「ああ、ごめん、ごめん。お昼はパパがラーメン作ろうか」

「うん、らーめ、ちゅき」


 祐奈のエプロンをひっかけてキッチンに立つ。

 真新しい台所は気持ちがいい。


「ユウ、ラーメン出来たぞ」

「わーい、らーめ、らーめ」


 洗面所で手を洗い、ダイニングテーブルに座わった。


「ママがフーフーしてあげるね」


 祐奈は祐樹の器に少しだけラーメンを入れた。


「パパ、ぼくきらい?」

「何でそんなこと言うんだよ」

「だって、じゃり、じゃり」

「えっ、卵の殻が入ってたか?」


 祐奈は大きいお腹を抱えて立ち上がった。


「卵を割るのは力加減が難しいの」

「ユウ、わざとじゃないんだ、ごめん、ごめん。それはパパが食べるから、ユウはママに作ってもらって」



 機嫌を取るわけではないが、食後に近所のコンビニにアイスクリームを買いに行った。


 ミャーミャー


 鳴き声のする方を見ると、公園の手前に段ボール箱が置かれてあった。

 祐樹が駆け寄った。


「ねこちゃ」


 その段ボール箱を見た良雄は慄然とした。




 家に帰ると言った。


「ユウ、保育園のお友だちに何か言われたのか?」

「ママのあかちゃ、うまれてぼくすてる。ねこちゃとおなじ、はこがおうち」


 良雄は祐樹を抱き締めた。


「祐奈もおいで」


 二人を抱き締めて言った。


「祐奈も祐樹も大好きだよ。愛してる」




     【了】

 


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