荒野の牛

 はじめて赤入れされる人は、「いえそこは、だから、こういう意図があって」と説明したくなるでしょう。
 ですが、担当する人は他人の眼で、さくさくとあちこちに赤入れをしてきます。

「次こそは赤入れを減らしてやる」

 そう想っても無駄です。

 赤いダーツをもって荒野をうろうろしている人が、たまたま的になる牛を見つけたので投げてます。
 そのくらい、ばしばし入ってきます。

 真っ赤になって返ってくる原稿をみても落ち込む必要はありません。
 それが『ふつう』です。
 あなたの書いた力作は、校閲さんの眼にとっては、いい的みつけたぜ……と舌なめずりするような、「荒野の牛」でしかないのです。


 死ぬやん。


 大丈夫です。
 刺さったダーツを見つめながら、残したいところは残してもいいのです。
「確かにそうだな」
 そう想えば、直せばいいのです。

 秋坂さんはとても優しい赤入れさんなので、上手な方ほど「物足りない」と感じるのではないでしょうか。
 それ以外の方は、まずは、秋坂さんから飛んでくるダーツを遊園地のアトラクションのように楽しんで下さい。
 わー本当に刺さってくる~キャッキャッ。

 そして赤入れの終わった原稿をじっくり読んでみて下さい。

 さあそれで、再度、全ての文章を磨き上げ、「これでもう赤入れはなくなっただろう」と満足したとしても、他の赤入れさんに見せると、また赤が入ります。

 赤くしないと死ぬ病気なんだ……!

 そのくらいに、牛である我々は想っておいた方がいいです。赤入れは、そういうお仕事なのです。

 見るべきところを見て、やさしい口調で提案してくれる赤入れさんは、赤くなった原稿に落ち込むよりは、「また頑張ろう」「またこの人に赤入れしてもらいたいな」という気持ちをおこさせます。
 修正されるなんて、なんだか怖いなぁ。
 そんな方ほど、秋坂さんは、いちばんお勧めできる赤入れさんです。