伝説の大賢者が住んでいた部屋
にゃべ♪
念願の部屋を手に入れた魔法使い
男は念願の部屋に住む事が出来て満足していた。この物件に辿り着くまで何度も調べ、内見を繰り返し、しっかり吟味して、ついに求めていた部屋を見つけ出したのだ。彼は案内をした不動産屋の社員も驚くくらいのリアクションをする。
「有難う! ここに決めた!」
「は、はい。こちらこそです……」
実際、ここは駅からは遠いし、日当たりも悪いし、近くにコンビニもない。条件的にあまりオススメ出来ない物件だ。それに家賃だって安くはない。
けれど、男にとってこの部屋は長年探し求めた部屋だった。他の条件がどれだけ悪くても良かったのだ。この部屋である事が大事だったのだから。
住み始めた彼は壁に向かって術式を構築する。すると、壁一面に未知の魔法式が浮かび上がった。そう、この部屋はかつて大賢者ムーヴが住んでいた部屋。部屋自体に幾つもの魔法の仕組みがなされていたのだ。
ムーヴの魔法理論は時代を先取りしすぎて誰にも理解されず、この部屋のあちこちに式を記録して後世に託す。それの発見こそが男の目的だった。
彼は自らが編み出した自慢の術式で部屋のあちこちに隠されていた秘儀を暴いては、それを闇に流して高値で売りさばいた。ムーヴの知識は100年は先を行っており、欲しがる人には言い値で売れる。
男はそのボロい商売で一気に大金持ちになった。見つけた魔法公式は男が理解出来ないものもあったが、内容が分からなくてもとにかくふっかけて金に変えていく。男はこの錬金術に笑いが止まらなかった。
そして、あらかた暴き終えたところで最後の仕事に取り掛かる。それはムーヴが導き出した完璧で究極の魔法陣の発掘だ。噂では、駆使すれば世界を意のままに操る事が出来ると言う。
今までは何もかも売っぱらっていた男も、この魔法陣は自分で使おうと目論んだ。
彼は慎重にムーヴの仕組んだ秘匿魔法を解くものの、後もうちょっとのところで失敗。守護ゴーレムに首を絞められ、その一生を終えたのだった。
伝説の大賢者が住んでいた部屋 にゃべ♪ @nyabech2016
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