住宅の内見・時空超えハウス
京極 道真
第1話 レトロガラスの玄関ドア
4月から一人暮らし。自由だ。その前に部屋探し。来月からのパラダイスな一人暮らしのための最高の部屋を探している。
水曜日から今日で3日め不動産会社も2件。
気力と体力がいる。今日は少し遅めの13時から駅で待ち合わせだ。
昼メシ、現地で食べ周辺を散策?いや偵察だ。偵察嫌な言葉だがこれが僕の性格だ。
駅から右信号商店街。左信号住宅街。
きっと不動産の案内物件は左の住所だ。
信号機が点滅。ダッシュで渡る。前方におじいさんが杖をついてゆっくり渡っている。なぜか僕はダッシュをやめ、おじいさんの視界に入る距離でゆっくり歩いた。当然渡り切る前に信号は赤に。僕らはゆっくり渡りきった。
「ザー。」車の行き交う音を背に住宅街へ入り込む。キョロキョロ。11時の住宅街静かだ。
道幅は車はゆっくりすれ違いできる幅。
緑の大きな木の、大きな家が見えた。
「あっ、おじいさん。」
「少年、さっきは助かった。礼を言う。茶を出そう。」
「ありがとうございます。」
レトロガラスに飾りのある引き戸の玄関だった。
「お邪魔まします。」奥の日当たりの良い中庭の縁側に通された。春の太陽の光は心地よかった。
「そうだろう。春は良いな。」
あれ?僕は言葉に出していない?
おじさん、心を読んだ?まあ、いいっか。
「はい。そうですね。」
「少年、他の部屋ものぞくか?」
「はい。」反射で答えた。
廊下奥左のドアを開ける。
「この風景は?」
「駅前だ。田畑が続く豊かな土地だ。」
「そうですね。」
今度は廊下左のドアを開ける。
「今度は畑さえもない、ただの土地だ。
緑の大きな木が一本、誇らしく存在している。
おじいさん、あの木は?」
大きな風が吹いた。
「時は流れるが土地は変わらずそこにある。」
おじいさんは?家は?
気づくと目の前に約束の不動産屋さんが。
「こちらのアパートが物件となります。」
おじいさんの家は消え、3階建のアパートが。
エントランスは、あのレトロガラスのドアだ。
「内見お願いします。」
住宅の内見・時空超えハウス 京極 道真 @mmmmm11111
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