第10話「除霊は続くよ何処までも」
「
ふとササに注意された事を思い出した。
本当は、パセリにササとの事が終わったのだと連絡せずに引っ越しするつもりだった。
「パセリに報告しろと言われてたからな。義務は果たそう」
オレは「フラレた」とだけ言った。
パセリはそれ以上聞かなかった。
そっとオレを包みこんでくれた。
「それでこれからどうするの?」
「隣町に引っ越そうと思う」
「ふぅん。引っ越したら教えてよね?」
「ん。それだけ?」
「もっと言って欲しい?」
「いやぁ」
「もっと言って欲しい? ウフフ。そっかーちょっとは脈あるのかー。そうね、大学卒業したら、そっち遊び行くからぁ」
それから10年つき合った後、パセリと結婚した。
パセリの父親の会社を引き継ぎ、子供を設け、50代になって会社を子供に譲った。
人性の折りかえし地点、再びオレは除霊師をはじめた。
パセリは?
「え? 私もついて行くと思ったの? 好きにしなさい。私は十分幸せだったから……」
あっさり許してくれた。
どこかの町のどこかで怪異はいる。
今日の依頼は、怪異に取り憑かれた中2の少女。
「ああ、これはダメなヤツだ。悪魔憑き、最難関の除霊だ」
引きこもり少女の部屋で簡易祭壇を組み立てると、オレはこう叫ぶ事にしている。
「ササさーん。助けて!」
「ハーイ、はじめまして、
また、オレの事忘れてる。
「除霊師さん、オレ、探知は得意なんです。一緒に組みませんか?」
「それは大助かりです。組みましょう! 組みましょう!」
そしてまた、オレは恋に落ちるのだ。
除霊が始まった。
小ぶりな乳房と豊満な乳房との戦いが始まった。
やっぱりオレは、観客で除霊師ササさんの艶姿を観覧する。
「除霊完了」
引きこもり少女は、静かなイビキをかきはじめた。
「ところで、ササさんの3つの願いはなんですか?」
「あれ? 言った事ありました?」
「まあ、たぶん」
「そうですねぇ。ええと、この街の彷徨える霊を残らず全て除霊する事?」
「そうか、この街では悪霊がまだまだ存在すると納得しました」
「お金を貯めて両親に温泉旅行をプレゼントする」
「あれ? 乙女の恋は良いんですか?」
「良いんですよ?」
あれ? このササさんは、バージョンアップしてる?
「最後のひとつはですね──隣町に引っ越した夫の除霊の手伝いです」
ササはオレを覚えていた。ちょっとイタズラしていただけだった。
「おかえりなさい、ウコン」
「う、うん。ただいま」
「ところでーパセリって誰ですか? 浮気ですか? 私と結婚して、すぐ浮気ですか?」
「あーソレはなんだ。ササが成仏したんじゃないかなーって、諦めたから?」
「あなたが除霊を続ける限り私は居ます。私と除霊を続けますか?」
「それは勿論。続けます」
そして、オレは息を引き取る前日まで除霊師を続けた。
しびれを切らしたパセリが途中参加したが、3人になっても結構仲良くやっていた。
──了──
艶姿美人除霊師さん 三雲貴生 @mikumotakao
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