幽霊になって知りました

Asahi-Yuhi

 俺は名も無い幽霊。


 今年で一年この家に居座っていることになる。


 あー、生きてた頃の記憶なんて無い俺がなんで成仏しないんだろ。


 全然成仏担当の死神さん来てくれねーんだよな。



 あっ、そのプリンお姉ちゃんのじゃん!


 この家の小三のズル賢い男の子が冷蔵庫を開けてた。


 手にはこの家の小五の女の子のプリンが。


 さっき、お母さんに「お姉ちゃんが帰ってきたら冷蔵庫のプリン食べるように言ってね〜」って言われてただろうがっ!


 このガキ、またプリンを盗み食いかよ!


 俺だって食べてーのに。


 俺は幽霊だから、なんにも食べなくても生きていられる。


 てか、この世のものに触れること出来ないし。


 あっ、ソファーにのってテレビ見ながら食べるのか?


 うわ、うまそー!


 この家、普通の家らしいけど、かなり大きい。


 三階建てで、地下一階もある。


 俺は二階のこの男の子の部屋にいることが多い。


 なんだかんだ、一番かわいい。


 この子がこっそり部屋の隅におやつを集めて、こっそり夜食べてることも知ってるし。


 部屋がかなり広いからそこをお母さんにバレたことは無い。


 あっ、ちなみに今、俺と男の子がいるのは三階。


 ここがリビングで、一番綺麗。


 お姉ちゃんの部屋が一番汚い。



 金持ちのこの家は、高級なもんばっか。


 幽霊だから何にも触れられないから、俺が壊すことはない。


 でも、男の子が家の中でボールで遊んでいると、あの高級な花瓶や時計が壊れないかハラハラする。


 この男の子には親近感がわく。


 俺が────だったころとそっくりだ。


 え? なんで、思い出せないんだ?


 俺はこの家の──だった。


 俺の頭に霧がかかっている。


 思い出したいのに記憶が


 あそこの部屋は?


 俺が今まで見たことの無い部屋が俺の目に写った。


 俺はその部屋に入る。


 部屋のなかには、あの男の子が大人になったような姿の写真と俺の姿を映す鏡があった。


 俺はこの家に俺がいる理由。


 成仏していない理由を理解した。


──ああ、やっと死神さんがやってくるかな。

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