【KAC20248】今すぐ逢いたい!

この美のこ

今すぐ逢いたい!

「うわぁ、素敵なお家ね」

奈々は興味津々の顔つきで、通されたリビングの部屋をぐるりと見ながら言った。


「そう、翔が不動産屋の仕事柄、色んな家の情報を持ってたので色々見て回った結果ここに決めたのよ」


「そっか、二人のに適ったってわけね。確か翔さんとは住宅内見会で知り合ったのよね」


「うん、そう!たまたま彼がコンサルタントでマンションを案内してくれたんだけど、私、、合った瞬間、超タイプって思ってビビッと来たわけよ」


「ふ~ん、蘭のにも適った相手だったわけね」


「翔がね、帰り際にそっとスマホの番号を書いた紙を渡してくれたので、私、翌日には電話してた」


「蘭って私と違って積極的よね。で、それから?」


「あの時見たマンションは購入しなかったけど、彼とは気が合うっていうかとんとん拍子でお付き合いが始まったってわけ」


「それであのサプライズプロポーズかぁ。いいなぁ。」


「何言ってるの、奈々だってあれ以来潮先生といい感じになったじゃない」


「えへへ、そうだった」


 あのサプライズプロポーズがきっかけで、奈々と蘭は急速に仲良くなって今では大親友の仲。

今日は先月結婚式を挙げたばかりの二人の新居にお邪魔している。

翔は仕事で不在なので、女ふたりでおしゃべりに花が咲いていた。

美味しいケーキを頬張りながら、香りのよいコーヒーを飲みながら、甘い新居での楽しい時間はあっという間に過ぎていった。


 温かい気持ちに包まれて蘭の新居を後にした奈々は溢れる想いと不思議な縁を感じていた。

一年前には思ってもみなかった素敵な出逢いの数々があった。

あの時、失意のどん底だった私が東京タワーから見た夜景。

ストリートダンスで出逢った潮先生。

東京で初めてできた大親友の蘭。

一年前の奈々に言ってあげたい。

あなたの未来はこれから輝いていくよ。

だからもう少し、踏ん張って負けないで!


奈々はおもむろにスマホを取り出して電話した。


「潮、今すぐ逢いたい!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【KAC20248】今すぐ逢いたい! この美のこ @cocopin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ