【黒歴史放出祭 特別作品】語り手のこわ〜い話

語り手ラプラス

こわ〜い話

 これは、僕がまだ高校生の頃の話。


 ある日の部活帰りの事でした。


 その日は練習試合が遅くまであり、部活が終わった頃には、もう既に外は暗く、廊下や階段の電気は消されていました。


 普通なら部活が終われば、そのまま帰ります。

 ただ、あの時の僕は違いました。

 そう。とてもお腹が空いていたのです。


 なので、あの時の僕は校内にある食べ物を売っている自販機を目指して、暗い廊下を歩き、明かり一つない階段を恐る恐る降りて行きました。


 今、考えればよく転けなかったな。と思っています。


 それで、自販機まで辿り着き、売られているメニューを目にすると、週末だったせいか、どれもコレも賞味期限切れで、まともに頼めるものなんて“カレーパン”しかありませんでした。


 ただ、お腹が空いていた僕にとっては、そんなのどうでもいい問題でした。


 迷うこと無くカレーパンを注文し、自販機から出てきたカレーパンを取り出しては、一心不乱に食いつきました。


 だけど、その時の僕はカレーパンに夢中になり過ぎて、気づく事が出来ませんでした。

 近くにあった階段の方からカツンカツンと足音がしている事に……。


 カレーパンを半分まで食べたあたりで、僕はようやく廊下から聞こえてくる足音に気づきました。


 だけど、残念な話。

 当時の僕は恐怖よりも食欲の方が勝っていました。


 聞こえてくる足音を無視して、ひたすらに目の前にあるカレーパンを貪り食っていると、部屋の扉がスススッと開き、一筋の光がこちらに向かって来ました。


 流石の僕でもあの時の扉や光は驚きました。

 だけど、それと同時に思いました。

「あ、やっちまった」……と。


 カレーパンを食う動きが止まり、光の方を注視していると、光の方から「ひっ」という声と共に後ろに何歩か下がる足音が聞こえて来ました。


 そう。足音の正体は僕と同じくお腹が空いて、何か無いかなぁ。と自販機のところまで来た先生でした。


 今、思えば、先生には本当に申し訳ない事をしたと思います。

 食欲を満たす事ばかりを考え、部屋の電気を点けず、自販機の淡い光が放たれる部屋の中で、必死になってカレーパンにがっつき。


 先生が光を向ければ、暗い部屋の中でカレーパンをひたすらに貪り食っている少年が少しだけ血走った眼をこちらに向けてくるわけですから……。


 側から見れば、ホラー映画でしかない。


 まあ、その後、先生とはカレーパンを食いながら軽い世間話をして、カレーパンを食べ終わると同時に帰ったのですが、卒業してからになって思う話。


 怪談にならなくて良かったな。

 と思いました。


 まあ、もしかすると、僕が知らないだけで怪談になってるのかもしれませんが。


 ……もし、とある高校の怪談や七不思議の一つに。暗い部屋の中でカレーパンを貪り食う少年の話があれば、それはきっと僕かもしれません。

 と言うか、絶対それ僕です。


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語り手

「黒歴史放出祭ということで、近況ノートとかで語った事もある。語り手のある意味黒歴史を書いてみました。面白かったら、評価または、感想を聞かせてください」


p.s.

これを見て少しでも笑った人。⭐︎くれないのなら、夜中の1時に無性にカレーパンが食べたくなる呪いかけます。

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