異世界プピ不動産の妖精小人族キアラ♀は不動産業で奮闘す!

龍神雲

第1話 妖精小人族の私が巨人族の男性に住宅の内見を依頼されまして

 異世界で妖精小人族が運営するプピ不動産に勤めて五年――

 これまでに剣士、魔導師、僧侶、シーフ、勇者、竜騎士、魔王等に数々の住宅を提供してきた。

 どの職や種族にも喜ばれ、仕事に自信を持った妖精小人族のキアラ、二五になった私の前に、住宅の内見をご所望するお客様が訪れたが――

「ツリーハウスに住みたいのですが、ツリーハウスの内見はできますか?」

 プピ不動産に訪れたのは、身長六十m超えの巨人族の男性だった。

 年齢は二十歳前後でプピ不動産の自動ドアの入り口いっぱいに顔を近付け訊いてきた。

「えっと、はぃ、勿論できますが……」

 巨人族にツリーハウスを勧めるのは初めてで、

(巨人族にお勧めできるツリーハウスなんてあったかな?)

 疑問も浮かぶ。

(まさか架空物件や売却意思のない物件じゃないよね……?)

 安心と信頼の実績を誇るプピ不動産に勤務してたが、今まで不当表示はなかった。

(だ、大丈夫よね……?)

 不安になる中――

「キアラさん、これ、今日広告したツリーハウスの場所」

 隣の席に座る、同じく妖精小人族のココ上司が物件のチラシを私に渡した。早速、目通しすれば、物件は存在していた。だが安心はできない、実際に物件があり、巨人族が住めるかどうかが問題だ。

 チラシを鞄に入れ、内見に行く支度をした。


     ☆


「ではご案内します」

「はい」

 巨人族の男性は緩やかに立ち上がった。

(ひぇ……大きいどころの騒ぎじゃない!)

 身長九十cmしかない私にとって、六十m超えの巨人族は怪獣だ。お客様なのに怪獣にしか見えない。だがどんな外見でもお客様はお客様である。

(仕事を全うするのみよ!)

 そう巡らし、巨人族を案内する。


     ☆


 チラシの住所に着けば、身長六十m級の巨人族でも住める巨大なツリーハウスがあり、様々な種族が混在し賑わう商店もあった。

「いかかでしょうか?」

「良いですね、ここにします」

 巨人族の男性は即決で契約した。

 プピ不動産は安心と信頼の実績を保ち、今日も上々だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界プピ不動産の妖精小人族キアラ♀は不動産業で奮闘す! 龍神雲 @fin7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ