コズミック不動産は今日もお客様のため宇宙的物件をご紹介します

今回の依頼者：夢見る邪神さま

　惑星が一つ消し飛んだ。

　一個目の物件として内見して戴いたのだが、どうやらお客様はお気に召さなかったらしい。

　弊社ではあらゆる形態の住宅をご紹介させて戴いている。

　しかし、今回のお客様――邪神の方が満足できる物件となると、なかなか難しい。

　あちらのご希望としては、長期間の休眠が可能な出来て間もない（しんちく）の惑星（かおく）を希望されており、また将来的には自分の世話を焼いてくれる奉仕種族（ペット）との共生も視野に入れて欲しいとオーダーを賜っていた。

　弊社は宇宙一の不動産屋を自負している。

　必ずご要望通りの物件をご用意できるはずだと、次の惑星を案内させて戴いたのだが……そこでお客様から、大変なお叱りを受けることになった。

　新築であるはずの物件、その上に文明（かび）がはびこっていたのだ。

　登録時には煮え立つ溶岩しかなかったはずの惑星は、いつの間にか雨漏りして水がたまり、陸地には植物がはびこっていた。

　おまけに、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れや、蟻塚（いえ）を作る二足歩行の裸猿なども観測されてしまい、弊社の面目は丸つぶれ。

　お客様には平にご容赦を願い、後日隕石を衝突させ（バルサンす）ることでようやくお許しを戴いた。

　このままではいけない。

　名誉挽回、汚名返上。

　気合いを入れて最後の物件を紹介する。

　お目にかけたのは、宇宙中心部という最高の立地に存在する闇黒飢餓星（ブラックホール）。

　全自動で周囲のゴミ、空間、時間、あらゆるものを吸引し圧縮、廃棄してくれるという超のつくクリーンハウスだ。

　これにはお客様も大変満足を戴けたようで、嬉しそうな泣き声を上げながら内覧をスタート。

　その結果、周囲六万光年の生命が息絶えたが、こちらの仕事とは関係ない。

　お客様の判断は速かった。

　ここを終の棲家とすると宣言され、即時契約。そのまま永遠の眠りにつかれた。

　これにより宇宙は消滅の危機を免れたらしいが、弊社としてはどうでもいい話だ。

　今後もお客様満足度の高い素敵な物件紹介できるよう鋭意努力していく次第である。