魔法少女に追い掛け回される日々を送っています
なるほどな、理解した。
私には全く経験が無かった、知識でしか存在を知らなかった事象。
これは、あれだ。『女子会』ってやつだな。
「アルファちゃん! アルファちゃんだ! わー、わぁーすごぉい……ホンモノ、ほんものだぁー……!!」
「あ、あのっ! すこし前、わたし
「先パイのこと守ってくれてありがとう! アルファちゃんありがとう!」
「す、すご……さらさら……髪の毛、さらさら…………きれぇ、いいにおい……」
いやはや……女子三人寄らば
なんでも現在の日本には、定額二千円足らずで好きなだけソフトドリンクや甘味や軽食を飲み食いできる形態の店舗が存在しているらしい。
ともすると前世の私が生存していたときにも在ったのかもしれないが……少なくとも私は利用した記憶が無い。今世における今回が初めての経験というわけだ。
なるほど、定額であれば会計額を気にする必要も無い。未だ在学中の子が多いであろう今回の参加者も、気兼ねせず楽しめることだろう。
…………いや、他でもない私達にとっても……この料金設定は非常に助かる。
集合日時と集合場所を事前に共有する、前時代的な『待ちあわせ』による合流を経て……本日私達二人は『スイーツシャングリラ
私が(右腕の補修と戦闘衣装の一新のため)動けない間、ディンが半ば強引に段取りを整え、気がついたら開催が決定していたという……経緯からしてもはや笑うしかない会合である。
先述のように時間制食べ放題、しかもパーティールームを予約済。今回の幹事である【
三人寄って
「ディンちゃんはスイシャン来たことある? 初めて?」
「あい! わたし、初体験です!」
「一緒に食事に出掛けること自体、殆ど無かったからな……私達」
「んゥゥー……ワタシ、眠ってる長期間です。かあさま、ずっとおシゴト多忙、でした!」
「「「「…………………………」」」」
「ほ、ほら! いっぱいあるから、今日は好きなだけ食べよっ! ディンちゃんパスタ、パスタたべる?」
「んゥー!」
「……すまんな、ウチの妹が」
「…………いえ……これくらい!」
とはいえ私達だが……まぁご存知のように、普通の家庭に生まれ育った訳では無い。
何気ない話題に何気なく答えたところ、どうやら知らず識らずのうちに地雷が爆発していたようで……なんとも言えない空気に満たされたりもしたが。
そうは言ってもティータイムの、基本的に賑やかな集いだ、そんなに盛り下がることもあるまい。
「そういえば……アルファちゃんって、何歳? ディンちゃんは『
「んゥ! そ――――」
「んな
「んゥー…………そう、です?」
「「「「……………………」」」」
「ち、ちなみに……アルファちゃんは、何歳?」
「………………考えたことも無かったな。何歳に見える?」
「えっ!? えー、っと…………背丈は、12歳くらい? あぁでも、もう少し上かな? お胸は身長の割にしっかりしてるし」
「じゃあそれで良い。……自分が何歳かなんて、そんなの気にしたことも無かったからな」
「「「「……………………」」」」
「ゥ? むね?」
「お前は見せようとするな馬鹿!」
「きゃ~~~~~~!!」
「「「「…………(ごくり)」」」」
…………まぁ、うん。
概ね……明るく賑やかな集いということで良いだろう。
なにせ、これまでは(主に私が取り付く島も無かったせいで)
私はそれ程意識していた訳では無かったのだが……私にとっては予想外なことに『ずっとお礼を言いたかった』との言葉をくれた魔法少女が、何人も存在したのだ。
私自身、特に見返りや返礼を求めていたわけでは無い。
庇護を受けて然るべき存在を守ること、また倒すべき外敵を倒すことに、特別な対価など求めてはいない。
……だが、こうして直接感謝を述べられること。それそのものは、決して悪いものではない。
そして何よりも……私に礼を述べ、私の手を取り、喜んでくれた彼女達。その晴れ晴れとした笑顔を見るのは……なるほど、悪くない。
ディンからの働きかけがあったからとはいえ、こういった場を設けてくれた【
まぁ尤も、純真無垢なウチの娘にセクハラを働いた件に関しては別問題だ。私やディンの隣に座ることを許さず、ことあるごとに給仕として働いて貰っている。
しかし当の本人はというと、何やら幸せそうな顔してケーキや軽食を運んでいるので……果たしてこれが罰則になるのかは、少々疑問の余地が残るな。
…………消化不良気味ではあるが、仕方ない。
私は何も、年端も行かぬ少女を責め立てて悦に浸る程、人間性を欠いているつもりは無いのだ。……人間ではない自覚はあるが。
「…………それで、やっぱ強さの秘訣って――」
「ねぇねぇアルファちゃん、その髪って――」
「このおなかのどこにあんなデカ盛りが――」
「はやく元気になってね! 長生きしてね!」
「もっと食べて食べてアルファちゃん! かわいいとこ見せて!」
「ねーねーほらほらピザ焼きたてだって! いっぱい持ってきた!」
しかしまぁ、本当、なんていうか……今どきの女子の会話能力とは一体どうなっているんだ、無限に話題が尽きないぞ。
会話もそこそこで食事に専念するのかと思ったが、逆だ。基本的に常時会話を行い、フルスロットルで走り続け、その合間合間に思い出したかのようにフォークを伸ばす程度。
しかもそれが、私達を除いても10人も集まっているのだから……その賑やかさと会話の密度といったら。
だが、まぁ……私には少々過酷な催しではあるが、少女達に囲まれ嬉しそうに微笑んでいるディンを眺めるのは、確かに悪くない。
これで彼女ら魔法少女達が満足してくれて、不幸な事故が減らせるというのなら……やるだけの効果はあるのだろう。
尤も正直なところ、私は
「……あっ、アルファさん」
「何だ、セクハラ魔法少女」
「ご、誤解ですって…………それはそうと、
「は? え…………は?」
「いえ、あの、『は?』では無くてですね。……あの、私最初に言いませんでしたっけ? 魔法少女10人くらい集めて歓談ケーキバイキング、とりあえず
「………………聞いて、ない」
「んゥー、ワタシ、記憶してます! かあさま『もうどうにでもしてくれ』返答した、証言します!」
「……………………」
「………………だそうですので、大丈夫ですか? 来週の土曜」
「……………………その、まさかとは思うが……【
「
「……………………」
「……あの、アルファさん? まさか本当に忘れ……」
「んゥ! ミレイおねえちゃん、安心してください、推奨します! かあさま、非緊急時行動、ワタシ補助します!」
「あ、ありがとう。…………ふふっ。頼りになる子ですね、ディンちゃん」
「…………あぁ、本当に。自慢の娘……あぁいや、妹だ」
かつて一度は死を迎え、非常識極まりない形で生き返り、色々な迷走と葛藤を経て……こうして今に至る。
一度は『不要なもの』と切って捨てた魔法少女達との関係も、こうして間近で見て見る限りでは、そう悪くないようにも思える……のだが。
だが……私の性根は、どこまで行っても彼女達とは異なるのだ。
つまり、その……具体的に言うと……こういった、キャピキャピした雰囲気に浸かり過ぎると、
「んへへぇ~~! かあさま、ワタシが包囲拘束、ぎゅーします! かあさま、
「うぅぅ尊い…………そうですよアルファさん、少なくともこうして前例作っちゃっ……作っていただいちゃったわけですし。……ここでやめたら、他エリアの子たちがまた騒がしいことになりますよ?」
「…………もう……どうにでもしてくれ」
身内であるはずのディンによって、逃げ道を完全に断たれたとあっては……もはや私に抗う
いや、あの子が良かれと思って焼いてくれている世話なのだ。抗おうとは思わない。
とはいえ……一回りも二回りも下回る年頃の少女達との、機嫌を伺いながらの交流か。
あくまでも、私の本意によるものでは無いという大前提だけは、改めて表明させて貰うとして。
――――――――――――――――――――
これにてひと段落となります。
ここまでお付き合い、ならびに格別のご支援を賜り、
本当に、
本当にありがとうございました。
デビアス・ピースキーパー 〜異星文明製ガイノイドとして蘇生された私は、魔法少女に追い掛け回される日々を送っています〜 えう @enjehirsc
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