不幸な俺と天使な君が幸せになるまで

第3話朝の憂鬱

「終わった……」

　入学式やHR兼クラスメイトとの自己紹介が終わった休み時間朝陽は机に突っ伏していた。

「終わったって何がだよ？まぁ元気出せって～、普通の男なら全てを捨ててでも欲しがるポジションなんだぜ？」

「なにもかも終わったんだよ、入学式も自己紹介も俺の波風立たない平和な高校生活も……」

　元気なんて出せるわけないのである。朝、この前ナンパされていた少女と再開した。そこまではよかったのだが自分より遥かに年下だと思っていた少女が同い年で同じ学校に通うというのだ。

　しかも、ものすごいモテるらしい。まぁあの容姿なら当たり前だろう。

　金髪でセミロング、あどけなさを残しつつ大人っぽさも混ざった顔。登校しているだけで多くの男達を虜にしたらしい。

　そんな彼女が大勢の前で俺に

「私の友達になって下さい!!!」

　と頼んできた。超絶美少女とどこにでもいる陰のオーラをまとった男、その関係性が気になるのは当然だろう。

　そして朝からこれだ

「ねぇねぇ、西園寺くん達ってどういう関係なの？入学式以前から交流があったの？」

「ずるいぞ!どういうことか説明しろ!」

　俺達の関係性が気になり興味津々に聞いてくる女子生徒、羨ましそうにしたり恨みがましそうにしている男子生徒からの怨嗟の声。頭が痛くなりそうだ、俺にだって分からないのだ。

「別に深い交流があった訳ではないし特に俺と成瀬に関係はない。」

　成瀬、これが彼女の名字。フルネームは成瀬天海（なるせあまみ）。

　なぜ知っているかって？同じクラスだったのだ。

　朝、教室でクラスメイトのみんなに向けての自己紹介の時間があった。一人ひとり簡単な自己紹介をしていった。好きな食べ物や趣味、好きな動物など。

　何の変哲もない自己紹介の時間だったが俺の番の時は少し周りがざわついていた。当たり前だろう登校中に少しハプニングがあったから。ざわつくことは分かっていたのでよかったのだが、自己紹介中、俺以上にざわついていた人がいたのだ。

　「はい」

　と、きれいでよく通る声で返事をして立ち上がった少女はナンパから助けた子、すなわち登校中に友達になろうと言ってきた子だった。違うクラスなら関わる機会も減ると思ったが不幸体質はそれすらも許してくれなかった。

「成瀬天海です。好きな食べ物はクッキーで趣味は読書。動物はみんな好きですが、猫ちゃんが一番好きです。これから1年間よろしくお願いします。」

　自己紹介中にやたら俺の方を見てくるし周りのクラスメイトからの視線も痛い。今までの人生で一番心苦しい自己紹介の時間だった。

　そんなこともあり朝のワクワクした気持ちはどこえやら、今は本当に鬱な気持ちだ。

　高校こそは普通の生活を送ろうと意気込んで登校していたのにいきなりあれだ、本当に憂鬱だ。

これからの高校生活を考え憂鬱な気分に浸っていると声がした。自己紹介の時にも聞いたよく通る声。

とても嫌な予感がしたが無視するわけにはいかない。

「どうかしたか？」

「はい、朝の返事。聞かせてもらっていいですか?」