緊急バッファロー情報の真価
小道けいな
緊急バッファロー情報の真価
サイレンが鳴った。
――緊急バッファロー情報、緊急バッファロー情報、ただいまバッファローが近づいてきています。進路上にいる者たちはすぐに退避してください。繰り返します。緊急バッ――。
ドドドドドドドドド。
ドドドドドドドドド。
ドドドドドドドドド。
地響きや音にかき消される防災無線。
緊急バッファロー情報を防災無線のスピーカーから流すこと自体がナンセンスともいえる。
バッファローの群れの音が聞こえているということは、逃げることはかなわない、進路上の大地にいれば。
逃げられるかもしれないが、地響きと恐怖に凍り付かず、逃げられそうな地下道やシェルターがあれば、だ。
もちろん、空を飛ぶという特技があればどうにかなる。
バッファローが近づけば聞こえなくなる緊急バッファロー情報。
その情報はバッファローの群れがそこから去るまで、または、防災無線のスピーカーがついている支柱がなぎ倒されるまで流される。
誰が聞いているかわからない、から。
防災無線のスピーカーから流すことがナンセンスと言っている通り、実は、ここには便利なアイテムがあった。ここが持つ小型の情報端末があるのだ。
それに流せばいいというのに、なぜそうしないか?
持っていない人もいるし、たまたまバッテリー切れを起こしている人がいれば気づくことができない。
バッファローの音がすれば気づけるのだが?
遠くの時点で分かれば逃げ切れる。
どこからどっちに向かうかは勘となるかもしれないので危険は伴う。
バッファローの群れはあらゆるものを破壊して突き進む。
家屋を、店を、ビルを畑を――。
バッファローはどこから来て、どこに去っていくのか。
そのことは予測もできるようになってはきた。
世界を回っているバッファローが、一定の気温になるとグルグル回り出し、集団で移動し始める。
一定の気温というのが本当に一定かが謎。
同じ温度でも発生しないこともある。
他にも理由があるはずだ。
行動の流れは分かっても、どうしてそういうことになるかということはわからない。
微分積分の計算を持って天候について理解した人類だが、バッファローの群れという新たな脅威には対応しきれていない。
最初の頃、これを駆逐すれば解決する――という意見も出た。
しかし、それらを殺すことは、生態系を破壊することにもなる。
あれらが暴れることによって生態系を破壊しているという状況であるため、いまいち説得力を欠く。
それらを倒すとしても、どうするか? 爆弾を投下すれば、結局、地域を破壊するし、一体一体狙うのも何頭いるかわからない群れを消すには実際的ではない。
やってくるバッファローの群れを駆逐することを試した国もある。
それによって侵入してきた群れは駆逐した。
例えば自然災害ならば、豪雨が降りそうだったのがなくなれば、その場で起きるだろう災害は防げるだろう。
バッファローは生き物であるということを痛感させる出来事が、その後、その国を襲った。
仲間を殺された復讐をしたかのごとき出来事――都市部にとどまり暴れた群れ――。
ちなみに、バッファローは群れの部分が狙われるとそちらに進路をとる傾向もあった。全滅すると他の群れが来るので、原理は同じことなのかもしれない。
さて、今、緊急バッファロー情報を流している国。
それで避難してどうにかする方法をとっていた。
地下に首都機能を動かし、生活はできるようにしている。
しかし、人間、太陽の元に生きる。
だから、何事もなければ地上に出たい。
さて、今流れている緊急バッファロー情報。
大変問題が生じていた。
地下にある首都から流しているのだけれども、私はどこに逃げればいいのだろうか?
――緊急バッファロー情報、緊急バッファロー情報、ただいまバッファローが近づいてきています。進路上にいる者たちはすぐに退避してください。繰り返えしません! 私たちも逃げます! 地下に流れてきました!!
まさか、地下に流れてくるとは。
道はあるのだから防壁を壊して入ってくることは想定外とは言い切れないなぁ。
緊急バッファロー情報の真価 小道けいな @konokomichi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます