【黒歴史】バドミントンサークル
麻木香豆
🏸
たぶん15年前か。私が婚約破棄した直後だ。
中学時代の友人Cの結婚式の二次会に呼ばれた。
Cは婚約破棄した私を元気づけたいと呼んでくれたのだ。
楽しまなきゃ……と同じテーブルにいたのは同世代の男女と、40代の酔い潰れたおっさん一人。
みんな個性豊かでどう見ても共通点はおっさん以外は若い、てくらいだ。
実際私が一番年下で社交的な人たちばかりでアウェーでも楽しめた。
「みなさん、仲良いですね」
て私は聞いた。
「うん、私たち同じサークルなの」
「バドミントンサークルやっててさ。仕事終わりに体育館借りてやってるのよ。あなたもどう?」
……バドミントン。、
当時の仕事はパートの割には激務で。朝早いし座り仕事だから少しは体を動かさなきゃ。
運動音痴だけどバドミントン。婚約破棄したし新しいことを始めてみよう、と思って
「はい!」
と答えた。
それから月に二回。
この時のメンバー以外にも何人か同世代の男女が来てて。
すぐみんなと仲良くなった。
楽しい。
こんな世界今までなかった。
高校大学と女子校で。小中学と男子が嫌いだったし。
男性とまともに喋ったのは社会人になってから。でもみんな怖くてまともに話せなかった。
だから優しくしてくれた男にふらっと捕まって何も知らず付き合ったから変な人に当たって痛い思いをした。
そいつらと別れたおかげでこんな楽しい世界が待っていたのだ。
第二の青春。
バドミントンに打ち込んで人生楽しもう。
親にも話していいじゃない、と言われ。職場の人にも始めたから少し人変わったねと褒められた。
「そいやそのサークル、試合とかどっかするの?」
「ん?」
私は体育系のサークルというのは小学生の時の少年団のスポーツしかやったことないけどその時も半年に数回は試合あったなぁ、そういえばこのサークル以外の人と特に交流ないわ。
このメンバーで飲み会行くくらいしか。
「ゆるいサークルなんだね」
と職場の人に言われ、うんー。って。
「まぁ若い子同士楽しんでね」
と職場の人はニコッと微笑んだ。
3年くらいかな、実際にバドミントンに明け暮れたのは。
年月は経ち、私はサークル以外の人と結婚しみんなもそれぞれ結婚した。
今はみんな子供がいて忙しくて一年に一回会えるか会えないかくらいになってしまった。
運動音痴なりに楽しんだ第二の青春。
またバドミントンしたいなぁ。
とか思いつつCちゃんに久しぶりに会った。
当時のバドミントンの話をした。
したらば彼女はエッて顔をした。
「ガチでバドミントンしてたの? ……あなたが婚約破棄して落ち込んでたから紹介したのに……」
「え?」
どういうこと?
「男女の出会いの場を作るためのバドミントンサークルだったのよ。バドミントンはその口実!」
私は言葉が出なかった。
「私もそのサークルで男探して夫と出会ったんだから! って離婚したんだけどね! はははっ!」
だからか。
サークルの時に感じた違和感。
やたらと優しくして来る男性。
やたらと飲み会誘って来る人たち。
やたらと日帰り旅行に連れてってくれた男性。
やたらとSNSにコメントくれた男性。
合コンセッティングしてという男性。
そしてサークル内で次第に増えていくカップル。
私は恋愛というステージに立たせてもらっていたのにもかかわらずバドミントンにガチで汗水垂らして第二の青春って……。
家族や職場の人たちにニコニコ言いふらしてさ。
ああ、職場の人のあの言葉。
そういうわけか。
私しか知らなかったのか。
……。
私の青春……。
終
【黒歴史】バドミントンサークル 麻木香豆 @hacchi3dayo
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