ホル美と次元バッファローの群れ

愛田 猛

ホル美とバッファローの群れ

ホル美と次元バッファロー



うららかな日差しを浴びながら、ホルスタイン女子高生のホル美は、昼休みの魔法学園の教室の自分の机でうつらうつらしていた。


(ああ、幸せ~この至福の時間は何物にも代えがたいわ~)


そんな夢うつつの時間を過ごしていると、友人のミノタウロスの美少女、ミノ子がやってきた。同じ牛系なので、二人は仲良しだ。というか、しっかり者のミノ子が、のんびり屋のホル美の面倒を見ている感じだ。


「ホル美、よだれ垂らしてるよ。だらしないわね。ほら。」


そう言って、ミノ子は、自分の色と同じ、茶色いハンカチを差し出した。


「ありがと~。でもよだれが出るのは幸せの印なのよ~。」

ホル美がのんびりと言う。ショートカットの美少女のはずだが、よだれを垂らし、顔が緩んでいて残念感が強い。


「そんなの、聞いたことがない。ホル美だけよ。ほら。」

ミノ子は、ハンカチを奪い取ると、ホル美の口元を拭う。


「それより、ホル美は午後の魔法戦闘の授業は大丈夫なの? 最近、次元バッファローが出るから、先生も結構ピリピリしてるわよ。」


ちょっと心配そうにミノ子が聞いた。

ミノ子はミノタウロスであり、魔法が堪能だし、筋力もある。ミノ子は魔法戦闘も、武器での対人直接戦闘も得意だが、ホル美は運動がダメダメだ。


「まあ~、私は支援の役割だからいいのよ~。着替えも特にいらないし~。」


ホル美は、トレードマークであるホルスタイン柄のセーラー服を着たままだった。セーラー服の胸部は、ホル美の巨乳ではち切れんばかりだった。


一方、ミノ子は動きやすい茶色のジャージ上下を着ている。ただ、控えめな胸部は、ジャージとシャツの下につけているスポブラでしっかりぴったり包まれている。なお、今日は魔法戦闘の授業なので、武器は身につけないことになっている。


「それより~、次元バッファローって~、例の、突然現れて、『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』ってやつよね~。次元魔法を使って突然現れるんだってね~。 なんで、そんなことするのかしら~?」


ホル美は心底不思議そうに首をかしげる。


「さあ、破壊衝動でもあるんじゃないの。私はバッファローじゃないからよくわからないけど。」ミノ子はこともなげに答える。


「破壊衝動~?」ホル美は不思議そうに尋ねる。

ホル美が小首をかしげると、ホルスタイン柄に包まれた巨乳が揺れる。


「そう。本能的に、何か壊したいって思うんじゃないのかな。それで、好きなように壊してるのか、仕方なく壊してるのか。でも、それで世間からはつま弾きにされて、居場所がなくなるから、そのストレスでまた破壊に走る。悪循環かもね。」

ミノ子は分析する。


「そんなもんなのかな~_。お昼寝してればいいと思うんだけど~。」

ホル美はあくまでのんびりと答える。


「そんなの、バッファローに通じないんじゃないの。昨日も、隣町に出て、町の大部分をぶっ壊しちゃったらしいよ。こっちにも、いつ来たって不思議じゃないの。」


ミノ子はそう言って、ホル美に危機感を少しでも醸成しようとする。



その時、教室の前部の戸が大きなバーンという音とともに開いた。ウマ系の魔物であるケンタウロスが立っていた。ケんた


クラスメイトでお調子者の、ケンタウロスのケンタだ。だが、今日は珍しく真剣な表情だ。


ケンタは教室に入ってきて叫んだ。  



「次元バッファローが来たぞ!みんな逃げろ!」


そういうとケンタは向きを変えて走り出した。


きっと、クラスメイトを助けるために、こうやってわざわざ来てくれたのだろう。


お調子者だが、気のいいやつだ。 ついでに、誰かを連れていったらもっといいのだが、彼に気配りを期待してはいけない。


生徒たちは、皆蜘蛛の子を散らすようにドアから逃げていく。そして、飛べる者は窓からも出て行った。


「ホル美、逃げよう!」

ミノ子がホル美の手首をつかむ。


だが、ホル美は首を横に振った。

「あ~あたしの足じゃ、むりかな~」


鍛えているミノ子と違い、ホル美は運動が苦手だ。巨乳が邪魔で早く走れない、という理由が一番大きいのだが。


「何言ってるの、急がないとこの校舎もつぶされちゃうよ!」


ミノ子は焦る。なんだかんだ言って友達思いなので、自分一人で逃げることはしない。


「うーん、屋上行こうか~。」ホル美はあくまでのんびりと言う。


まあ、屋上ならすぐだし、空から助けが来るかもしれない。最悪崩れても、物の下敷きにはならないだろう。

ミノ子は同意し、屋上へ二人で急ぐ。



屋上は、下の喧騒が嘘のように静かで、やわらかい日差しで包まれていた。優しい風が、ホル美のスカートを揺らす。


「ホル美、パンツもホルスタイン柄なのね。」ミノ子がどうでもいいことを言う。


「うん、かわいいでしょ~!柄の位置でバリエーションがあるのよ~。」ホル美が嬉しそうに言う。危機感のかけらもない。


「あ、来た!」ミノ子が叫ぶ。

屋上から、バッファローの群れが校門を吹き飛ばして校庭に入ってくるのが見えた。


ホル美はそこで、ミノ子に頼む。

「ねえ、ホル美。幻影魔法で、私の姿を空に映して~!」


ミノ子は、何も聞かずに得意な幻影魔法を詠唱した。

ホル美に何か考えがあるのだろう。


青空に、ほわーんとしたホルスタイン女子高生の姿が映し出される。


ホル美はバッファローの群れに呼びかける。


「みなさ~ん、ちょっと待ってくださ~い~!」

もちろん、ミノ子の幻影魔法とセットになった拡声魔法で、声も響きわたる。」


「みなさんの居場所も、きっとどこかにありますよ~。それより、私と一緒にお昼寝しませんか~ 楽しいよ~」


毒気を抜かれて、バッファローの群れが立ち止まる。


その時、ホル美が叫んだ。

「極大乳魔法、レインボーミルクスプラッシュ!」


大空に、七色の霧が舞った。

これは水滴ではなく、ミルクだ。


ホル美の乳魔法というのは、文字通りミルクを出すものだ。

通常、いろいろな回復に役立つ効果があるので、戦闘では後方支援として傷ついたり疲労した兵士を癒す。


だが今回のは、鎮静と睡眠作用のあるものだ。 眠れない子供に、ホットミルクを与えると静かになって眠る。それと同じような作用だ。


それを広範囲に放出する、極大魔法をホル美は放ったのである。


虹色の空wおみながら、バッファロー田阿知波地面に崩れ落ち、眠り始める。 「女神様だ…」などとつびやきながら崩れ落ちるバッファローもいた。


「うまく行ったね~」

ホル美は軽く笑う。だがホル美も魔力と体力の限界だ。 ホル美が屋上に崩れ落ちるところを、ミノ子が何とか支えた。


極大乳魔法を放ったせいで、あれだけあるはずのホル美の胸がぺったんこになっている。


(今なら、私でもホル美に勝てそうね。)ミノ子は思いながら、ホル美を優しく膝枕するのであった。





「ホル美、今日はここね。範囲間違えちゃだめよ。」

ミノ子が紙を渡す。


「わかった~」ホル美は答える。

そして、周りに声をかける。


「みんな~、準備はいい~」

「「「「「「へい、姐さん。」」」」」


バッファローの集団が答える。


「お姐さんじゃなくて~社長でしょ~」

「「「「「「へい、姐さん。」」」」」


あの事件の後、バッファローたちの居場所を作るため、ホル美は会社を作り、社長になった。


もちろん、実務などまったくできないホル美に代わり、いろいろな手配は副社長のミノ子がすべてとりしきっている。


ただ、ホル美は、例の事件以来、バッファロー軍団から女神のようにあがめられており、社長として皆を率いることが求められたのだ。



「姐さんじゃないんだけど、まあいいわ~。 ホル美ブレイク工業、出陣!」


「「「「「「おお~」」」」」」


バッファロー軍団が歓声を上げる。


そして、次元魔法で現場に転移した。


ホル美が立ち上げたのは「ホル美ブレイク工業」という名前の解体工事会社だ。

バッファローたちの能力を利用して、必要な場所を解体する。


次元魔法があるので、解体後のがれきの撤去まで簡単に行えるのだ。


「がれきの撤去が済んだから~みんあで整地して~」

ホル美が言うとホル美が指示すると、バッファロー軍団は一斉に土地の上をグル仏と走りだす。

これで土地を踏み固め、解体工事は無事に完了だ。


「は~いお疲れさま~帰るよ~」

「「「「「「へい、姐さん。」」」」」


そして皆は会社に戻る。

「皆さ~ん、今日もありがとう~。じゃあ、これね~」


ホル美はそう言うと、乳魔法で皆にミルクを与える。


「ぷは~この一杯を楽しむために、俺たちは生きているようなもんです。姐さん、今日おありがとうございました。」

バッファローの棟梁、バフ男が代表してホル美に礼を言う。


「いいのよ~私も~みんなの役に立ててうれしいから~」


かくして、「ホル美ブレイク工業」は業容拡大の一途をたどり、「ホルスタイン女子高生社長」としてホル美の名声は世界に響き渡るのであった。



めでたしめでたし。


(完)

=====

あえて、kACの「三分でどうの」というのは避けました。

まあ、それでもよかったんですけどね。


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ホル美と次元バッファローの群れ 愛田 猛 @takaida1

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