第98話 華麗なる師弟コンビ!



 ようやく20階層に到達した。


「ここまでくれば、ウチは後衛でええやろ。何かあったら矢で打ったるさかい。頑張ってや~」


 呑気な口調と共に、ルカは後ろに下がっていく。

 一気に緊張感が高まった。


 すると奥側から、大きな植物系の魔族が触手のような蔦をうねらせながら近づいて来る。

 やはり見覚えがある奴だった。


「プラント・イーターだ。間違いないぞ」


「相変わらず魔力制御が上手いわ……一見すると低級並みだもの。初見じゃ見極めるのも難しいわね」


 俺に続き魔法士エアルウェンも感想を漏らしている。

 特に彼女の場合、イクトのオーバーキルで生まれ故郷を焼き払われているだけにトラウマだろう。


 プラント・イーターは無数の蔦を伸ばし鞭のように振るい空気を切らせて襲い掛かってくる。

 まさしく音速級の勢いだ。


 俺達は後方に下がり各々の武器を手にして構える。


「アム、俺達二人で奴をやるぞ! エアル姉さんは魔法で援護してくれ! パルシャは後方で待機しリフィナとルカを護ってくれ!」


「わかりました、師匠!」


「了解よ、グレンくん!」


「わかったニャッ!」


 各自、指示通りの陣形を取り始める。

 すっかりチームワークが取れるようになった。

 マジ、イクトいらねーっ。


 俺は呼吸法で竜気を全身に巡らせた。

 同時に《呪われし苦痛カース・ペインで皮膚に黒い血管が浮き出るも、腕輪の効果で激痛は消失している。


「行くぞ、アム!」


「はい、師匠!」


「援護するわ――《貫通突剣魔法グラディウス》!」


 俺とアムティアが駆け出す中、エアルウェンが攻撃魔法を発動し支援する。

 魔力で構成された剣が撃ち放たれ、迫りくる触手を穿ち切り裂いた。


 プラント・イーターは頭部と思われる蕾を開かせ、牙だらけの醜悪な素顔を見せる。

 同時に葉を刃に変え、俺達に目掛けて放った。


 俺とアムティアは悉く躱していく。

 刀剣を掲げて一気にプラント・イーターの懐へと入り込む。


「「――竜瞬殺リュウシュンサツ!」」


 左右混合に放たれた超高速の斬撃。

 プラント・イーターの頭部が宙を舞い、胴体の茎部分が倒れ伏せた。

 そのまま栄養を失ったかのように萎み枯れて果てていく。

 

 俺とアムティアは呼吸を整え、刀剣を鞘に収めた。

 戦闘を終えたことで、皮膚も元の状態に戻る。


「終わったな。アム、また腕を上げたじゃないか?」


「いえ、はい……光栄です」


 頬を染め照れている、アムティア。

 剣才があり、実戦を多くこなすことで強くなっている。

 いずれ俺と並ぶか、またそれ以上になるかもしれない。


「見事ね、二人共。息ピッタリで、お姉さん惚れ惚れしちゃうわぁ」


 エアルウェンが意味ありげに言ってくる。


「エアル殿、恥ずかしいのでやめてください!」


「俺とアムは10年以上の付き合いのある師弟だからな。これくらい当然だろ?」


「……そういう意味で言っているんじゃないわ、グレンくん。ひょっとして鈍ちん?」


「は? 鈍いって何がだよ?」


 このエルフ姉さんこそ何を言っているのやら。

 一回り以上も歳が離れているってのに何を期待しているんだ?


 エアルウェンは「もういいわぁ」と腰をくねらせながら下がっていく。

 俺も「まぁいいか」と思いながら雑用係に戻り、斃したプラント・イーターの素材を回収した。

 一方、アムティアは頬を染めたまま俺の方とチラ見している。


「どうしたアム?」


「いえ……私も回収を手伝います」


「すまない。助かるよ」


 何気ない師弟同士の会話。

 にもかかわらず、エアルウェンは「アムちゃん、尊いわぁ」とニヤついている。

 なんなんだ、まったく……。


 こうしてクエストを達成した俺達は、ルカのナビゲートで無事にダンジョンから抜け出し帰還する。



 冒険者ギルドにて。


「おおっ! 噂通り凄いな、竜撃パーティ! これは報酬だ。少し色を付けてあるから確かめてくれ!」


 ギルドマスター直々にお礼を言われ、報酬金を頂戴する。

 約1000万Gも入っている。

 ボス格を斃したとはいえ、思いの外良いバイトになったぞ。


「ほら、ルカ。お前の取り分だ」


「あんがとさん。ほなグレンはん、また来週――」


 ルカは分け前を受け取ると、そそくさと去って行った。

 借金取りが本業とはいえ、冷めた小人妖精族リトルフだ。


「よし、それじゃ俺達も準備を整えてから旅に出るぞ」


「はい、師匠!」


「そうね、グレンくん」


「……行こ、グレン」


「うにゃ、新たな冒険の始まりニャ!」


 俺の言葉に仲間達が素直に頷いてくれた。

 本当はアムティアがパーティのリーダーだけど、気づくと熟練者の俺が仕切ってしまっている。


 まぁいいや。

 そう思いながら、俺達竜撃パーティは国を出た。


 他大陸の勇者と合流するために――。



―――――――――――


ここまでお付き合いくださった読者の皆様、ありがとうございます!

これにて第一章完結です!!

第二章は未定ですが構想はあるので、いずれお会いできればと思っています!

面白いと思ってくれた人は評価してくれると嬉しいです!



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不遇職の雑用係おっさん、無自覚チート系イキリ勇者を追放する側となる←実は陰の英雄と知られる最強戦士なので全く問題ありません 沙坐麻騎 @sazamaki

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