500文字に映し出された、人の感情の強さと存在感。

500文字未満という文字数で、こんなに様々な色を出せるのかと驚かされます。
登場人物も世界観も、作品が纏う感情も。同じ作者様が書いたとは思えないくらいに色とりどり。

この掌編集を読むと、作者様は感情を掬い取る力が凄いと思わされます。
真っ直ぐに見つめる視線の熱だったり、
ストレートさ故に捻じ曲がった思いだったり。
感情が無いからこその恐ろしさだったり。
やはり、文芸作品の強さは感情の描写の凄さに裏打ちされるよね、と思いました。

このレビューを書いている時点で8作品がありますが、私がいちばん好きなのは「埋まらない隙間」です。
当然のように毎日そこにあったものだから、その隙間は埋まらないのではなくて、空虚という形で既に埋まっているのだ…
ドーナツの穴を見つめる感覚。

500文字という限られた世界の中に映る感情の強さ、人間の存在感。
それらを覗いてみてはいかがでしょうか。