第5話 ジスタヒア

「すみません、さっそく質問ですが、今は何年何月で、ここはなんという場所でしょうか?」


「今はディストロ暦326年の10月でここはクロムハウザー家の収める領でジスタヒアというところです。」

やはり聞いたことのない暦だ。土地の名前のも聞いたことがない。


「そうですか…、ここから街まではどれくらいですか?」


「ここから2マイルほどです。」

「2マイルというと…、4kmほどですか?」

「ええと、…それくらいですね。私たちの住んでいる街ではあまりkmの単位は使わないですけど。」


どうやら現実世界と共通する部分もあるようだ。



「アリサさんはその街にすんでいるのですか?」


「ええ、生まれも育ちもここジスタヒアです」



アリサはこちらをチラチラ見ながら歩みを進めている。


「ああ、あの、こちらの質問ばかりで本当にすみません、僕たちすごく遠いところからここに迷い込んでしまって…」


「私達のいるこの世界とは違う世界からいらしたのですよね?」


「え!??」


彼女はクスクスと笑う


「この世界でゴブリンを知らない人は赤子くらいです。それにその格好、明らかに異国の人と一目でわかります。あと、このあたりにはよく私達の住む世界とは違う世界の住人が迷い込むことがあると昔からの言い伝えがあります。まさか本当にお会いすることができるなんて、しかも同時にお二人も!」


アリサは少し嬉しそうに笑みを浮かべている。


「俺たちの格好ってそんなに目立つのか…。その言い伝えの通りだとすると他にも誰か同じようにこの世界に来た人がいるってことですよね?その…昔来た人がどうなったのか、帰り道があるとかは聞いたことはないですか?」


「ええと…来た人がどうなったか、や、帰り道についての話を聞いたことはないですが…街には気まぐれで顕現するこの世界の神がいる教会がありますので、一度そこに行ってみるのが良いのではないでしょうか?」

なるほど、確かに教会は超神秘的な事象を把握している可能性も高いだろう。神が気まぐれという条件付きではあるが顕現することには驚きだが、運良く目の前に現れてくれるのであればそれはそれでラッキーだ。


「この世界の神さまか…気まぐれってとこが気になるけど行ってみる価値はあるな…。ところでアリサさんはなぜゴブリンに捕まっていたのですか?」


「えぇと、それはですね…、実は私たちの街で行われる…あっ!」

アリサが何かに気づいたようだ。

「見てください。あれが私の住んでいる街です。」




彼女からゴブリンに囚われていた理由は聞きそびれたがすぐに気にならなくなっていた。


進んできた道、目の前が大きく開けて遠くまで見渡せる丘のような場所に付いていた。そこから見えたのは、まだ到着までは十分に距離があるがあまりにも堅牢で禍々しいほどの城郭都市がそこに現れたのだ。

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現実世界で無双した野球選手の通訳ですがどうやら異世界での使命はこいつのXXXを残すことのようだ。 @tsuki_nouma

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