牛の賢者

晴れ。

王の心臓と名乗る者


全てを破壊しながら突き進む

バッファローの群れ。


それは、

探究者たちが目にした

最後の光景だった。



探究者たちは

闇の眷属と呼ばれる

生命体の群れを

追い続ける。



そして

彼らは

この荒野まで

辿り着いた。



焼けるような

日差し。


太陽は

遥か頭上だ。


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バッファローの群れ。

それと共に

『牛の賢者』と呼ばれる

伝説の存在は

必ず現れる。



の当たりにし。

探究者たちは

息を飲む。



その正体。

想像を絶する恐怖に

満ちていた。




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『牛の賢者』は、

闇の存在として

恐れられている。



『牛の賢者』

古代から

この世界に住み着いている。

いつから存在するのか

誰も知らない。


人の歴史が始まった頃には

既に存在していた。


人間の命を

生き物の命を。

手も触れずに奪う。


人々には

逃れる事の出来ない恐怖と

おそれが広がった。



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『牛の賢者』は

自らを

『王の心臓』と名乗った。


常に本を手にしていた。

厚く

革で出来た表紙は

太陽の光の元でも

闇を感じさせる。


闇の眷属たちを率いて

人間の世界に恐怖を広げる。


血塗られた歴史を積み重ね、

死体の山を築いていく。



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『牛の賢者』は

楽しんでいるようだった。


人間の恐怖を。

苦痛に歪む表情を。



牛の姿をしているが、

その目は赤く光り、

その角は鋭く尖っている。


声は雷鳴のように轟き、

息は炎のように熱い。


闇の中から現れ、

闇の中へと消える。


彼は恐怖の伝説となり、

人間たちは

彼の名前を口にすることすら恐れた。



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「 私は牛の賢者。

闇の眷属の長であり、

『王の心臓』である。

この世界、

私たちが支配するべき領域がある。

人間たちはそれを侵すな。

侵す者は全て滅ぼす 」


牛の賢者はそう言って、

探究者たちを指さした。



闇の眷属は

バッファローの姿を借りている。

人間の魂を喰らう邪悪な存在。


群れの長たる

『牛の賢者』という名の怪物に

従い走り続ける。



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探究者たちは見ていた。



『牛の賢者』が

手にした本を開いた時。


恐ろしい真実に気づいた。


その本は、

闇の眷属によって書かれたものだ。

人間の魂を喰らう呪文が

満載されていたのだ。



探究者たちは

本を閉じようとした。

駆け出し『牛の賢者』に

近づこうとした。


もう遅かった。



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本から異形の手が伸びて。


何かが飛び出す。



一瞬のうち。


探究者たちは

鋭い牙と爪で引き裂かれ、

血まみれになってしまった。


探究者たちは

必死に抵抗したが

力及ばず。


探究者たちは

闇の眷属の笑い声を確かに聞いた。

同時に

意識を失っていった。





『牛の賢者』の持つ本は

彼らの魂を呑み込み、

満足げに唸った。


次の獲物を求めて、

再びバッファローの群れとともに

荒野を駆ける。












探究者たちの遺体は、

太陽の下で焼け焦げていった。



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 牛の賢者 晴れ。 @Nirvana852

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