卒業式と透明人間

京極 道真  

第1話 透明人間

今日は中学の卒業式だ。いつもと変わらない朝。いつも通り制服を着る。

いつも通りの朝。トーストパンが焦げる。

今日の母さん、バタバタだな。

「シュン、パン焼いてるから早く食べなさい。卒業式でしょ。」

「はーい。」返事はしたが今日のパンは焦げすぎだ。「にがっ。」

「行ってきまーす。」カバンは軽い。

3年通った学校。特に思い入れはない。

僕はドライすぎる嫌な子供?いや中3だ。

早かった。何の達成感もないまま卒業か。

まあ、こんなものか。

もう少し部活、真面目にやってもよかったかなあ? 

『そうだ。僕もそう思う。』透明人間が目の前にいる。よく見ると僕だ。

なんだこいつ。『君だよ。シュン』

「はあ?」夢か?いや違う。学校までのこの道のり。いつも通りの景色。同じ制服の生徒達。3階建ての校舎に向かって歩いてる。

「なんで僕が僕に話しかけるんだ。なんで透明なんだ。」

『僕はもう一人の君だ。よく見て前に女子3人歩いてるだろう。』

「あー」『よく見て真ん中の子のカラダのライン?』

「はあ?カラダのライン?朝からお前は何言っているんだ。」

『ばかだな。何、変なこと考えてるんだ。よく見ろラインの外のラインが見えるだろ。あれは生気にあふれている奴のラインだ。それに比べて両サイド特に右。あの子はラインが途切れ途切れ、かなり弱ってる。試しに顔を見ればわかるさ。』

僕は早足で抜き際に顔を見た。右の子の顔色が薄い。

「えっ?」

「お前の言った通りだった。」

『で、あの右の子の症状が悪化すると、本人の透明人間が出来上がる。君みたいにね。』

「透明人間。」

『シュン、君はこの世界に執着していないし、特段やりたいこともないんだろう。』

「そうだな。」僕は校門を抜け教室へ。

正しくは何をしていいか、分からないが正直なところだ。

『そうなんだ。』

体育館へ移動。既に泣いている女子。

卒業式の音楽。何も響かない。

なぜか焦げたパンの味が。「にがっ。」

透明人間は消えた。

「まだだ。」


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