あとがき
――全てのお題にチャレンジしました。
短編集としてまとめましたので、それぞれの短編のあとがきをおまけで追加します。
今年書いたKACを振り返ってみれば、ジャンルがほぼ現代ドラマですね……。
第1回の自由お題のみ異世界ファンタジーですので、通常お題は全てが現代ドラマとなりました(そのため、短編集のタイトルはあんな感じに)。
前年が異世界ファンタジーだったことを思えば、一気に真逆にいったとも言えますね。狙ったわけではありませんが、現代ドラマが書きやすいお題が続いたということでしょう。
連作ではなく、一作単発で完結する物語が9本となりました。
もしかしたら今後、長編作品へと昇華する物語があるかもしれません……。
(ちなみにKAC2022で発表した短編では、5作が長編になりました)
ジャンルが現代ドラマだとネタ一本で長編化するのは難しいとは思いますが……。
――それでは以下、あとがきです。
第1回 ハンプティ・カンパニィ
お題「書き出しが『○○には三分以内にやらなければならないことがあった』」
お題を見て本文を書く前に、まずは既に投稿されているものを数本、読んでいます。お題からまず一番最初に連想するものから遠ざけるのが私のやり方です。
今回で言えば、お題の中に入る「○○」は、人物が多いでしょうか? 私が読んでみた作者さんは、人物=名前を入れている方が多かったので、ではそれは避けるべきかな、と。となると「○○」になにを入れる? と考えた結果、私は「二分前」を入れました。
最初は「なぜ三分以内でないといけないの?」とか、設定された三分以内は「今か未来か過去」なのか、それを推測するお話にしようかとも思いました。
ようはお題の細部にツッコミを入れていくパターンですが、最初のお題でそれをするのは卑怯かなと思いましたし、最終手段とも思いました。
なので、ここは素直にお題に従い――「二分前には三分以内にやらなければいけないことがあった」……つまり残り一分しかない、という書き出しで進めてみました。
時間に追われているけどスムーズに事が進まない緊急事態とはなにか? と考えた結果、締め切り間近の社会人のお話に。
作中で本体アップデートが終わらない、と言っていますが、最近の機種はそうでもない?
……私自身、アップデートって長いなあ、というイメージが強かったので採用しましたが……アップデートには時間がかかるという認識が広まっていれば安易に『アップデートしますか?』に許可を押さないでしょう……などのツッコミどころも後に見つけてしまいましたが、そのあたりはコメディなので流してくれるとありがたいですね。
第1回 天使とバッファロー
自由挑戦 お題「全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ」
このお題、あまり悩みませんでした。
全てを破壊するなら、もちろん国も生物も全て破壊し、バッファローしかいない世界ができあがるだろう……と。
世界にはバッファローしかいないのであれば、地上最強? なら、空と地下にも最強はいるだろう、ということで上空最強の天使を主人公にしました。
最強同士が存在しているものの、決して交わることがない……。
実は、天使はバッファローに勝てないのですが、バッファローは空を飛べないので天使を破壊することはできません。そのあたりでバランスが取れているのでしょう。
テーマは釣りです。
上空から糸を垂らし、地下に眠る宝石を釣り上げる天使たち。
バッファローに見つからずに宝石を盗み取るのが正攻法なのですが、地中に埋まっている宝石を表に出すためにはバッファローが突撃した時の衝撃が必要なわけで……
ここに駆け引き=ゲーム性が出ています。
短編ではなく中編くらいの物語であれば書きやすいネタかもしれません。
長編にするのであれば、ちょっとネタとしては弱い、足りないでしょうね。勘ですけど。
地下にもなにかいる、という終わり方ですが、考えていませんので掘り下げるとしたらそのあたりの設定ですかね。
地下なので、どこまで掘れば顔を見せてくれるかは分かりませんが。
第2回 実装!VR内見
お題「住宅の内見」
『物件のスクリーンショットでは満足できない、だけど実際に内見をするほどではない利用者のためのアプリ』――があったらいいなあと思って書きました。
そういうサービスが実際にあるのでしょうけど、それをもっと手軽に使いやすく理想に近づけた形ですね。
VR上で内見をするとなると、痒い所に手が届かない部分もあると思います。
VR上だからこそ分からないもので……、結局は映像ですから当然ですよね。
けれども、実際に内見をしても分からないことは、VR内見では分かってしまいます。一長一短な理想のサービスですが、しかし良いことばかりではよくないなあ、と。
……短編として面白くするためには嫌な部分も見せないといけませんので、メリットが同時にデメリットになるという仕掛けを使いました。
細かい情報を正確に表示できるのは便利ですが、それってどうやって調べているの?
……知るべきではなかったことが常に身近なところに潜んでいるというお話でした。
第3回 ラッピング too MUCH
お題「箱」
体感ですが、シュレディンガーの猫を使っている短編が多かった印象です。私もテーマ候補の中にはあったのですが、他の作者さんとの被りを避けて候補から外しました。
まあ、箱というお題ならどう書いても被ってしまいそうですが。
箱、と言われたら今作で書いた考え方がまず前に出てきます。マイルドにしていますが、私の頭の中をそのまま書いていたら、透明な箱の中は実は「う○こ」でした。
中身が分かっていれば、嫌いな人は近づかないし、物好きな人は箱を開けてくれる……そういう人を大切にしたらいいんじゃない? という考え方です。
ラッピングとはメイク、肩書き、ファッションなどなど。それらが高い水準であればあるほどラッピングの下が期待されるわけで……。
だけど透明で中身が分かっているならガッカリもされない。だって分かった上で箱を開けているわけですからね。
ラッピングをしない理由を作れば、ラッピングをしなくてもいいでしょう?
箱と違って人間は、ラッピングをするにしてもセンスが問われますからねえ……。
第4回 ささくれレクリエーション
お題「ささくれ」
今年の中では一番困ったお題でした。
ささくれと言われたら皮膚がめくれるあれしか思い浮かばず……、ネタ探しのために調べることで「ささくれ立つ」という意味もあるのだと知り、二択になったわけですが、どうせなら……と、ふたつの要素を取り入れてみました。
内容としては、ささくれを知らない低学年の弟は、めくれた皮膚を重たい病気だと思い込んでしまいます。彼のお姉ちゃんは不安な弟を面白がっていじったものの……全ては弟の演技で、手のひらの上で姉が踊らされていた、という、ほんわかするお話に仕上げてみました。
……不安がる弟にどんな声をかけるのかと思えば、さらに不安にさせるお姉ちゃんで……。ちょっとした弱味、と言うのか……どうしようもない姉の一面を見て、いじれるネタを握った弟と姉の「いつもの喧嘩」が始まりますが、結局、最後には仲直りしているんですよね……。
母親が言ったように、「ささくれ立っても、すぐに乳繰り合うのよねえ――」という言葉こそが、このお話の核心でした。
第5回 口止めガールと口添えフィアンセ
お題「はなさないで」
話さないで、離さないで、放さないで……と、ひらがなのお題なので漢字にしてみれば複数の意味があります……変化球で言えば「鼻差ないで」とか。ただ、さすがに変化球過ぎて無理やり寄せたお話になってしまうと思ったので「話さない」と「離さない」のふたつを利用しました。
あまり書きませんが、百合ものとなっています(書かない、と言ってもメインに使うことはないというだけで、サブキャラがそういう属性を持っている作品は、恐らく書いたことはあると思いますが……)。
同性で付き合っていることを人に話さないで。
撮影しているシーンで叫ぶセリフ「離さないで」……――同じ言葉であるなら、後は必死感を出せればいいのであれば、「話さないで」と言わせても外から聞けば同じじゃない?
――素人の棒読みをなんとかしようとした結果の策だったわけですね。
第6回 トリあえず同窓会
お題「トリあえず」
最多文字数になりました。
お題をどう使ったかと言えば、「鳥会えず」です。
無人島で生活する友人と連絡を取るためには、直接、島へいくしかなくて……。
郵便物が届かないなら、あとは……ボトルメールか伝書鳩を利用するしかなく……。
今回は伝書鳩を利用したが会うことができなかったお話でした。
実際、スマホがなくなり、郵便物が届かなければ伝書鳩を使うのでしょうか。それともボトルメール? いや、それだと届かないことの方が多いと思いますが……。
それならまだ、伝書鳩の方が届きますかね。キャッチコピーはそういうことです。
第7回 カラートーク2024
お題「色」
色をテーマにした作品は過去にも書いてきましたので、アイデアに困ることはなかったのですが……、過去と被ることを避けようと思えば、結局、難しく感じましたね。
最終的に、色を使った言葉を使用することにしました……たとえば「旗色が悪い」「反省の色が見えない」「難色を示す」などなど……、その言葉を活かすための前座が作中で出てきました「道具」+「色」=「意味」という式になります。
軽く考えていたはずの前座の方に力が入ってしまったのは、書いていて楽しくなってきたからです。……完成までに大幅に時間がかかってしまいました。まあ、色々とチェックするべきところも多かったですし……。
それでもちゃんと式と答えが合っているのかどうかは分かりません。作中でセンセイが言っていたように、独自ルール過ぎる部分もあるので、組み立てた式が正解とも言えないわけですね。
タイトルは過去に使用した短編がありましたので、同名タイトル+ナンバリングを付けるのではなく、「今年」を意識しました。一応「KAC」ですからね……、ナンバリングは敬遠されてしまいそうな気がしましたので、それを回避するためです。
第8回 メガネ男子の潔白宣言
お題「めがね」
ラストのお題。正面突破でめがねを書きました……、ただし「めがねコレクター」でしたが。
部屋を埋め尽くすほどのメガネコレクションを持つオタクは、その世界を知らない人からすれば気持ち悪く映る……でもそれって、メガネだろうがアニメだろうが電車だろうが、野球だろうがアイドルだろうがなんでもそうなのでは?
オタクへの嫌な偏見って、アニメやアイドル、電車に向きがちですけど、スポーツ全般もそうなのではないか、と思ってしまうわけです。
私はもちろんアニメ系に分類されるとは思いますが、こっち側からすればスポーツ選手の名前と背番号が一致して、さらにはルールも把握し、チーム名もプレイひとつに付けられたカタカナの名前も分かっているのは、気持ち悪く思います……、悪い意味ではなく、ですよ?
単純になんでそんなこと覚えていられるの? という。普通、分かりませんよね。知る機会がなければ絶対に知らないわけです……。
それでもさすがに「ホームラン」くらいは分かりますけどね……。
ちなみに「オフサイド」はよく分かりません。テニスの点数もどうしてあんなに飛び飛びで増えていくのかも分かりませんし。
将棋の駒の、どれがどう動くのかも……まったく分かりません。それを全て、好きな人は把握しているわけで……。
知らない側からすれば、気持ち悪くないですか?
きっと、知っている側からすれば当然のことなのでしょうけど。ラノベオタクからすれば、「とある魔術の禁書目録」は電撃文庫、くらいの感覚なのでしょうね――
それが野球で言うところの「あの選手はあのチームにいる」、なのでしょうけど。
――というわけであとがきでした。
今年は難しいお題が少なかったように思います。
第1回とささくれくらいかな? 私はちょっと悩みました。ただ、書き出してしまえば勝手に走ってくれるので、後は流れに任せて……みたいな書き方なのでなんとか書けてしまいますが。
今年で挑戦は4回目でした。
そして全てのお題にチャレンジ達成です。
一応、過去のKACも載せておきます。
#2021
https://kakuyomu.jp/works/16816452219234136091
#2022
https://kakuyomu.jp/works/16816927862185804522
#2023
https://kakuyomu.jp/works/16817330653864787876
ではまた来年、2025で!!
THE人間【KAC2024総合短編集】 渡貫とゐち @josho
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