【KAC20241+】糞映画専門チャンネル・シルバーラズベリーショーにようこそ!
めぐすり@『ひきブイ』第2巻発売決定
『エクストリーム・カウボーイズ』という糞映画を知っているかい?
糞映画レビュー配信者には三分以内にやらなければならないことがあった。
もちろん糞映画の紹介と解説である。
そんなわけでエンタメ業界の下水道。
シルバーラズベリーショーチャンネルにようこそ!
……いや毎度のことながら、本当に酷い映画しか紹介してないのによく集まるよね。
みんな物好きだよね。
一応先に告げておくと、今日は糞映画同時視聴から逃げるな拷問タイム配信はやりませんよ。
やらないったらやらない。
紹介するってことは俺は一回以上は見ているわけ。
糞映画のなにが酷いって、初見で脱落者続出の内容だよ。
驚きの発想と設定で笑えるから、一回目は見れるわけよ。
出オチなの。
基本的に繰り返し見ることを想定されてないからね。
あの企画は初見組のキミら以上に俺への拷問なわけ。
疲労感パないの。
いつもの前置きを終えたところで、本日紹介する映画は……いやサメ映画じゃないし、怪人でもモンスターでもないし、最近流行りのヤンデレちゃんサイコホラーシリーズでもないからな。
コメント欄で予想しないでね。
そんなわけで本日紹介する糞映画はこれ。
糞映画界のスタンド・バイ・ミー。
『エクストリーム・カウボーイズ』
糞映画フリークならもちろん知っているよね。
面白い糞映画とはなにか。
その原点に立ち返えるにはこれほど相応しい映画も他にない。
サメ映画も怪人怪獣パニックムービーも好きだけど、もうシリーズ化テンプレ化して大喜利状態だよね。
糞映画を撮ろうとして撮っている。
でも本当の糞映画はそうじゃない。
監督に情熱が有り余っている。
撮りたい画が明確に存在する。
そのために舞台と設定と物語を用意している。
そこから予算や時間や諸々の事情が重なり、常識や整合性などをかなぐり捨てて、監督が撮りたかった世界が剥き出しになっていく。
それが俺の思う糞面白い糞映画なわけよ。
さて前振りも終わったところで、内容を簡単に説明するね。
舞台はアメリカ南部の西海岸よりのど田舎。
どれくらい田舎かというと吉幾三なのよ。
ガチで吉幾三。
開幕から主人公のラップで始まり、この田舎には何もないことが歌われる。
もうこの主人公のラップが映画の一番の見せ場と言っても過言じゃない。字幕版も吹き替え版も主人公の青年の歌が聞き入るほど上手いのよ。
あれ? もしかして糞映画じゃないのでは?
なんて思うんだけど、歌詞の最後がね……。
『移動手段が牛しかねぇ!』
……なのよ。
一気に作品の世界観がどういうこと?
となるよね。
バイクも車も電気自動車もないから、その田舎では全員獰猛なバッファローに乗って移動するの。
歌いながら徒歩移動する主人公の周りをロデオスタイルの集落民が追い抜いて行くわけ。
はい、糞映画確定!
この設定のバカさは糞映画でしか味わえないよね。
もう監督はロデオ撮りたいだけじゃないかな。
このとき俺もそう思って笑い転げた。
でもこの糞映画の本領発揮はここから!
意外と最初はストーリーがちゃんとしていてね。
主人公は同世代から『牛に乗れないチキン野郎』としてイジメられている。
家には集落一の立派なバッファローが飼われているんだけど、暴れ牛過ぎて誰も背中に乗ることができない。
そこに現れるロデオマスターの老師。
好きだよねアメリカ人はこの展開。
老師が主人公に告げるのよ。
『こいつの背には誰も乗れないぞ。敏感肌だからな』
はあっ!?
牛が敏感肌とかそんな理由で乗れないのかよ!
思わずツッコミをいれるよね。
他の牛に乗れよと思うよね。
でも主人公は家族として育ったそのバッファローに乗るために、老師に弟子入りして修行を始めちゃうんだよね。
木人と戦ったり、洗濯物干したり、足の指で酒瓶を挟んで持ち上げたり。
色々とパロっていくわけ。
ここまで飽きもせずに見れるのは、主演の青年の力だろうね。
歌も演技も上手いのよ。
どうしてこんな糞映画に出ているんだろうと思うほどにね。
だから一時停止して、その主演の青年が出演している映画が他にないか調べたわけ。
すると驚愕の事実が発覚した。
まさかの監督本人!
主演兼監督兼原作脚本まで全て一人でやってんのよ。
もう続き見るしかないでしょ。
そして修行が終わり、集落の大人の儀っていうのかな。
バッファローに乗って山を踏破する命がけのレースが開催されるわけだけど、ここからがさらに怒涛の暴走が始まるんだよね。
もう頭おかしいよこの主演兼監督兼原作脚本の青年。
ボロボロの姿でバッファローを連れて、会場に現れた青年。
彼はおもむろに服を脱ぎ始めて、引き締まった身体を見せつける。
そして全裸監督となり、バッファローと向かい合うと、牛の角を掴んで、体操選手ばりの倒立をし出した。
牛さんは敏感肌で背中に乗れないからね。
肌に触れられないなら角に乗ればいい。
そして体操競技の鞍馬の要領で技を決めて、最終的に足の指でバッファローの角を挟んで、バッファローの頭上で仁王立ちになりながらレースを開始するんだよ。
もうなに見せられているのか理解を放棄したね。
肉体美が凄いとか、マジでこいつなにやってんだよとか、なぜ全裸になったのかもわからない。
謎の光がいい仕事したよホント。
そしてレースはもちろん優勝。
イジメていた連中も牛の上で全裸仁王立ちする主人公を見て呟くんだよ。
「it's so cool」
で、ここでさらに衝撃の事実。
まだ五十分までの内容に過ぎない。
百分の映画だからここが折り返しなのよ。
もうお腹いっぱいなのに。
集落の誰からも認められた主人公。
仲間とともに西海岸までバッファローに乗って遠出することになった。
なぜか全員が全裸仁王立ちスタイルで編隊を組み旅立つ。
集落内のニュースタンダードになっちゃったみたいなんだよね。
ただ重要なのは集落の外からどう見えるか。
全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れの角に青年達が全裸仁王立ちで立っているわけよ?
映画のジャンル変わるよね。
今までがギリギリヒューマンドラマだとすれば、ここからは主人公達がモンスターのパニック映画が始まりってわけよ。
主人公達は当然のように、行く先々で混乱と物議を起こしていく。
悪徳業者のビルを壊したり、マフィアの銃撃戦の中を突っ切ったり、警察に銃で撃たれたり、線路の上を走って汽車と追いかけっこしたり。
他にもアメリカの映画のトレンドを揶揄するように、牛はメタンガスを大量に出す有害動物と主張する社会学者の横を通ったり、電気自動車とのレースに走りかったりもしたかな。
降りたり会話したりする描写もなく、ずっとバッファローに乗ったままだけどね。
ここで秀逸な演出は遭遇した人の反応が統一されているところなのよ。
「it's so cool」
「it's crazy」
この二種類しかない。
「it's crazy」と呟いた人たちは主人公達を止めようとする。
「it's so cool」と叫んだ人達は、いつの間にか主人公達の後ろで全裸になり牛の角の上で仁王立ちスタイルに参加している。
どうやって牛を調達しているかとか、細かいところはどうでもいい。
頭のおかしい集団が話が進むごとに増えて行くわけ。
そして彼らはニューヨークにたどり着く。
うん……ニューヨーク。
少しアメリカの地図を見ればわかるけど、何故かこいつら西海岸ではなく東海岸についているんだよね。
ワシントン州とワシントンDCを間違えたのかって言うぐらい真逆だし、アメリカ大陸横断しているし、かなり壮大な旅なわけよ。
途中で規模が大きくなりすぎて軍隊を出動して来るのに止まらないし。
ついにはアメリカ大統領がバッファローと全裸の変態どもを止めるために、秘密のボタンを押すことに。
まさか核兵器使用!?
と思ったら前振りもなにもなく自由の女神が動き出して、レスリングスタイルで主人公達に立ち向かうんだよ。
もう好き勝手やり過ぎだろ。
あと主人公後半ずっと全裸で牛の角の上で仁王立ちしたままなのだけどいいのかよと。
後半のストーリーのなさはまさに糞映画。
好き勝手詰め込むだけ詰め込んで、時間と予算の都合で全てを放り投げた感がもう最高に糞映画。
なにを見せられているのかわからない。
もちろん死闘の末、主人公達は自由の女神像も破壊して、今度は海の上を走り始めるわけよ。
そしてようやく締めの会話。
「なあ……俺達西海岸に向かっているんじゃなかったのか?」
「そんな小さいこと気にするな。俺達はアメリカ大陸を横断した。こうして海の上を走ってる。どこにだって行ける。宇宙にだって飛び出せる。地球は丸いんだ。このまま進めばアメリカ西海岸までたどり着くさ」
「だな」
こうして全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れの角の上に全裸で仁王立ちする青年達の旅は続くと。
もう最後のワンシーンだけは別撮りみたいにカッコよくてさ。
というかたぶん別撮りだろうね。
後半主人公達のセリフこれだけだし。
監督がツギハギして頑張って体裁を調えた感。
これが糞映画の醍醐味よ!
さて『エクストリーム・カウボーイズ』の紹介はこれにて終了。
実はこの作品は三部作の一部目で、二部に
『エクストリーム・カウボーイズ VS エクストリーム・マタドールズ 欧州決戦編』
があるんだけど、要らないよね。
えっ!? 需要あるの? ……本当に?
同時視聴もしたいとか頭大丈夫?
おっけー……わかった。
それじゃあいつも通り糞映画同時視聴から逃げるな拷問タイム配信を始めようか。
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